プログラミング

プログラミング教育が小学校で必修化されることの問題点とは?

プログラミング教育必修化の問題点

約10年ぶりの学習指導要領の改訂にともない、2020年4月から小学校の教科書がすべて新しくなります。

なかでも、プログラミング教育の必修化は大きな改訂ポイントであるとともに、「プログラミング教育では何を学ぶの?」「どんな授業が始まるの?」と漠然とした状況に不安を抱いている保護者も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、新しく小学校で始まる「プログラミング教育」について、

プログラミング教育とは
いつから始まる?ねらいは?
学校の授業での教わり方
プログラミング教育の問題点

といった小学生の親が気になる点をまとめてみました。

プログラミング教育とは?

プログラミング教育とは

プログラミング教育とは、身近な問題や目的を達成するために、コンピュータプログラムを通して解決方法を考え、論理的思考を養うことで、将来の情報社会に適応できる子どもを育てる教育のことです。

プログラミング教育はいつからスタート?

2020年4月の新課程(新学習指導要領の全面実施)から小学校で始まり、学校の授業のなかで学習していきます。

「プログラミング」という教科ができるのではなく、算数(5年生)や理科(6年生)といった複数の教科の授業のなかで横断的に学習します。

プログラミングの学校の授業での指導例

*ここでは、文部科学省が発表した「『小学校プログラミング教育の手引』の改訂(第二版)」を参考にまとめています。

教科 学校の授業での指導例
① 算数
(5年生)
正多角形の意味を理解し、プログラミングを用いて正多角形をかく。
② 理科
(6年生)
身の回りの物で、プログラミングによって作動しているものを知る。
③ 音楽
(4年生)
様々なリズムやパターンをプログラミングで組み合わせて曲をつくる。
④ 社会
(4年生)
都道府県の位置と名称をプログラミングで探して覚えていく。
⑤ 家庭
(6年生)
炊飯器に組み込まれたプログラミングを理解し、お米を炊く。

「プログラミング言語」や「コーディング」とよばれる、いわゆる専門的なコンピュータプログラムを学習するのではなく、簡単なコンピュータプログラムを通して、物事を解決するための論理的思考や課題解決能力を養うトレーニングをします。

 

プログラミング教育のねらい、目的

プログラミング的思考

目的①「社会で生き抜く力を身に付けるため」

情報化が進む社会で子どもたちが生きていけるように、小学生の頃からコンピュータプログラムに触れる機会を増やし、大人になっても生活していけるような力を養うことがねらいです。

いまの小学生が大人になる頃には、現在の世にある職業の約7割がAIやロボット技術に取って代わる(消失する)とも言われています。

つまり、急速に進む社会のIT化やAI技術に対して、

AIやロボットに仕事を奪われる

のではなく、

AIやロボットを使ってこれまで不可能だったことを可能にする

といったように、自ら考え、課題や問題点に対処していけるように子どもたちを教育していく、というのが小学校プログラミング教育のねらいの一つなのです。

目的②「世界に対抗できるIT人材を育てるため」

また、日本は先進国のなかでもプログラミング教育が遅れており、世界で勝負していけるIT人材が少ないともいわれています。

世界の小学生~高校生を対象としたジュニア向けの国際情報科学コンテストの『ビーバーチャレンジ』では、参加者数1位のフランス(47万人)に対して、日本(0.4万人)は30位と先進国のなかでもきわめて低い。

情報教員応援サイト『キミのミライ発見(河合塾)』より

小学校からプログラミング教育を行うことで、日本国内のプログラミング人材(IT人材)の裾野を広げる、つまり母数を増やすことで、優秀なプログラミング人材を輩出していくのがねらいです。

 

プログラミング教育の問題点とは

プログラミング教育の問題点

プログラミング教育の問題点としては、次の二つの点が考えられます。

プログラミングを教えられる教師不足

プログラミング教育を行うことになる学校の先生たちは、当然子どもの頃にプログラミング教育を学習してこなかった人たちですし、大学の教員養成課程でも十分に学習していません。

ベテランの先生になればなおさらで、コンピュータ自体を満足に扱える人材は一般企業と比べても少ないといえるでしょう。

そのため、いざ学校の授業でプログラミング教育をしようとしても、「何を子どもたちに教えればいいのかわからない」というのが教師の実情であり、学校現場の喫緊の課題であるといえます。

文部科学省が「教師がプログラミング教育に対して抱いている不安を解消し、安心して取り組めるようにすることをねらい」として作成したのが、『小学校プログラミング教育の手引』である。

『プログラミング教育の手引』は先行して取り組んでいる学校の実践例やIT関連企業との連携などにより改訂が行われており、

今後、全国的にプログラミング教育の授業案や教材例が増えていくなかで改善されていきます。

小学校のPC普及率の低さ

かねてより、小中学校にPCやタブレット端末の導入を試み、教育のIT化を図ってきた日本政府ですが、十分に学校現場に普及しておらず、自治体や学校によっても格差が出ている実態があります。

PCやタブレットといったハード面だけでなく、WiFiや校内通信環境といったソフト面にも課題があり、理想に対して現実が重くのしかかっています。

2019年11月末に政府が「全国の小中学校でPCまたはタブレット端末を児童生徒が一人一台ずつ使えるように無償配置する」という方針を固めており、それに充てる予算4000億円以上が計上される見込みと発表されました。

政府予算でPCやタブレットを支給する動きがありますが、それに対する教師の管理負担や整備コストなどにも課題が残され、思うように学校のIT環境が整っていない状況です。

もちろん、学校では教科横断的にPCやタブレットに捉われないかたちでプログラミング的思考や論理的思考を学習することにはなりますが、

このあたりも含めて、保護者や生徒だけでなく、学校現場にも不安が広がっているというのが実態であるといえるでしょう。

まずは、4月から始まる新課程のプログラミング教育について、様々な視点で注視していく必要があります。