はじめに
現代の子どもたちは、情報が溢れる社会で生きています。しかし、情報をただ受け取るだけではなく、「読み解く力」が求められています。新井紀子氏の新著『シン読解力』は、そんな現代社会において必要不可欠な「真の読解力」とは何かを解き明かしています。
本記事では、『シン読解力』の内容を詳しく紹介し、前著『AIに負けない子どもを育てる』『AI vs 教科書が読めない子どもたち』との違いや、実際に読んだ感想、さらにはAI時代における読解力の重要性についても掘り下げていきます。

2018年と2019年に刊行した「AIと子どもたちの読解力」をテーマにした著書2冊はいずれも超ベストセラーになって話題になりました。それから5年以上経過して、最近ではChatGPTが教育現場にも深く浸透してきているなかでの新刊。さて、シン読解力とは何なのか、みんなの口コミやレビューを要約しながら見ていきましょう!
新井紀子氏とは?
新井紀子氏は、国立情報学研究所の教授として知られており、特に「AIと教育」の分野での研究が注目されています。彼女のプロジェクト「東ロボくん(東大ロボット)」では、AIが大学入試をどの程度解けるかを実証することで、AIの限界と人間の知能の違いを示しました。
新井紀子氏の経歴
東京都出身。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫制大学院を経て、東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学等だが、人工知能や地方創生等、文理融合分野で幅広く活動をしている。具体的な研究成果としては、教育機関向けのコンテンツマネージメントシステム NetCommonsや、研究者情報システム researchmapの研究開発、リーディングスキルテストの開発、edumapの開発、米原駅東口再開発プロジェクトへの助言等がある。
2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。
科学技術分野の文部科学大臣表彰、日本エッセイストクラブ賞、石橋湛山賞、山本七平賞、大川出版賞、エイボン女性教育賞、ビジネス書大賞などを受賞。
2017年にTEDで行った講演は、23カ国語に翻訳され150万人以上が視聴した。2018年にはマクロン大統領の招待により世界のトップAI研究者とともにフランスのAI政策について進言。また、同年、国連において持続可能な開発目標(SDGs)と科学技術との関係を討議する第3回 STIフォーラムで基調講演を行った。
主著に「生き抜くための数学入門」(イーストプレス)、「数学は言葉」(東京図書)、「AI vs 教科書が読めない子どもたち」「AIに負けない子どもを育てる」(東洋経済新報社)など。
一般社団法人 教育のための科学研究所 代表理事・所長。
主な著書
- 『AI vs 教科書が読めない子どもたち』 (2018年)
- 『AIに負けない子どもを育てる』 (2020年)
- 『シン読解力』 (2024年)
『シン読解力』の本の内容要約
シン読解力とは?
『シン読解力』では、「シン読解力」とは、単に文章を読む力にとどまらず、情報の真偽を見抜き、自分の思考を構築する力だと述べられています。この読解力は、AIの能力を凌駕する人間ならではの力であり、特にAIが生み出す膨大な情報の中で正しい判断を下すために重要です。
シン読解力の大テーマ
① チャットGPTの衝撃
② 「シン読解力」の発見
③ 学校教育で「シン読解力」は伸びるのか?
④ 「学習言語」を解剖する
⑤ 「シン読解力」の土台を作る
⑥ 「シン読解力」トレーニング法
⑦ 新聞が読めない大人たち
シン読解力は何を問題としているか
現代の教育現場では、記憶や単純な読解力に偏りがちです。しかし、これからの時代に必要なのは「問いを立てる力」や「情報を批判的に評価する力」です。『シン読解力』は、こうした力を育むための具体的な方法や、実際の教育現場での実践例を紹介しています。
『シン読解力』で述べられている教育現場の課題
新井紀子氏は、現在の日本の教育システムでは、教科書に書かれた情報を暗記することに重点が置かれ、実際にその内容を深く理解することが疎かにされていると指摘しています。彼女の研究によれば、多くの生徒が文章を正しく解釈できておらず、特に中高生の読解力の低下が顕著だとされています。
実際に読んだ感想
『シン読解力』は、教育関係者や保護者にとって示唆に富んだ一冊でした。「AI時代に人間がどうやって価値を発揮していくのか」という根本的な問いかけがあり、読了後には「自分もシン読解力を鍛えたい」と強く感じました。
みんなの書籍レビューサイト「読書メーター」には次のような感想・レビュー・口コミが記載されています。
学生、社会人問わず一定数、しかも思いのほか多くの人が、読解力不足のため書かれた文章やイメージを間違って解釈してしまっている。文書に書かれた内容は、みなが当たり前に理解できている(理解できていないとすれば注意力が足りていない)というクリティカルな誤解があったため、読解力という学習能力の土台を訓練する必要性が見過ごされてきた。例題をやってみたところ結構間違ってしまった。くっそー
「AIvs〜」の続編で、パート3と呼ぶに相応しい本。大筋は変わらないがRSTから得られた大量のデータが著者の仮説を支持している。恐ろしいことにRSTの成績が、その後の成績を高精度に予測できてしまうことである。 自分もRSTを受けているため、本書の説得力は高い。 この話を知っているかどうかは子供の教育にも関わるため、知り合いには勧めている。読みやすいし、過去作を読んだことがないなら強い衝撃を受けるだろう。
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者による続編。シン読解力とは教科書を正確に読み解く力を指し、これを測るリーディングスキルテスト(RST)の例題も掲載。AIの基本や今後も語られている。生活言語と学習言語には顕著な違いがあり、自動的に学習言語が習得できる訳ではない。学習言語も教科で特徴は様々。認知負荷が掛かり過ぎると今取り組むべき「課題内在性認知負荷」に対応できないので、いかにそれ以外で掛かる「課題外在性認知負荷」を下げるかが大事。理科が苦手だったのは、これが理由だと分かった。
文書が期待しているほどには正しく理解されない事実が示され,文書による伝達の難しさに気付かされる。書く側も,読む側も,教える側も,意識せねば!「読みまくれ!」は通じない。
一方、Amazon・楽天ブックスには次のような感想・レビュー・口コミが記載されています。
本は素晴らしいのですが 頭が悪い 私には理解できない部分がいくつかありました。まず自動運転はダメだけれども 放射線科の画像診断の定期健診は OKというのはよく分かりませんでした。定期健診でも一定の確率で致死的な疾患が見つかることはあると思うのでミスが許されないという意味で同じではないでしょうか。やはり これも自動運転と同様に考えるならAIのみに任せてはいけない部分だと思います。逆の言い方をすれば定期検診で許されるのであれば 自動運転でも許されてはいいのではないでしょうか。定期検診でもニュース等で出てくるように一定の見逃しは存在するし、それは現在の医師でも同じ。車の運転でも一定の事故は存在するし それは現在でも同じなので、人が診断するあるいは人が運転するより確率が高い定期検診や自動運転の AI があればいいだけのことではないでしょうか。一定の外れ値問題は人間でも存在するという意味です。
『シン読解力』は、教科書を正確に読み解く力、つまり「シン読解力」について深く掘り下げた本で、まさに目からウロコの内容でした。これまで読解力といえば国語や読書の際の理解力を想像していましたが、著者はそれとは異なり教科書を理解する力が本当に重要だと指摘しています。
特に驚いたのは教科書を読めていない子どもたちがこんなにも多いという事実。さらに、子どもだけでなく大人も教科書や新聞が読めていないというデータにショックを受けました。でもこの本は単に問題を指摘するだけでなく、どうすれば「シン読解力」を身につけ、学力を向上させ、ビジネスにも生かせるのかを示してくれます。
シン読解力は、国語や読書では身につかないもので意識的にトレーニングすることで誰でも習得可能だという点が特に興味深かったです。実際に、RSTというテストで成績が向上した事例も紹介されていて、読んだ後には実際に自分もこの力を高めたくなるような気持ちになりました。
教科書をうまく読み解く力は、これからの学力だけでなくビジネスにも大きく影響するという点を考えるとこの本はすべての人にとって有益だと思います。シン読解力を身につければ、人生が変わる可能性すらあると感じました。
50万部近く売れた、「AI vs 教科書が読めない子どもたち」の著者であり、RST(リーディングスキルテスト。以下RST)の考案者である新井紀子教授による待望の新刊です。今回は、前回の前著でうまく伝わらなかった「読解力」を新たに「知識や情報を伝達する目的で書かれた自己完結的な文章を自力で読み解ける力」を『シン読解力』と改め、紹介しています。私にとってRSTは前作「AIに負けない子どもたちを育てる」で簡易版を受けてみましたが、自分は数学を扱う能力が極端に低いことが分かり、その解決法示した今作は待望の続編でした。最近現れて話題の生成AI、「チャットGPT」の概要とその能力などを皮切りに、「学習言語」とは、そしてRSTの結果が如何に学力と相関性があるか、また、如何に日頃新聞などに載っている文章を大人でさえも読み解けていないかが具に著わされています。最後には、『シン読解力』を伸ばすための基礎・上級トレーニングの例が一部載っています。基礎編は、新聞記事の見出しを使った簡単にできるものなので、著者が言及するように、新聞が1コーナーとして記事に載せてくれたら有意義なのではないかと思います。著者には『シン読解力』の益々の追求を期待したいです。
前著との違い
『AIに負けない子どもを育てる』との違い
『AIに負けない子どもを育てる』は、AIに対抗するための教育法に焦点を当てていましたが、『シン読解力』では、より具体的に「読解力」にフォーカスしています。特に、文章を読む力だけでなく、「情報をどう扱うか」という実践的な部分が深掘りされています。
『AI vs 教科書が読めない子どもたち』との違い
『AI vs 教科書が読めない子どもたち』では、日本の子どもたちの読解力不足が問題提起されました。一方、『シン読解力』では、問題提起に留まらず、具体的な解決策や実践方法が提示されており、読者がすぐに活用できる内容になっています。
AI時代における読解力の重要性
AIが進化する一方で、人間の「読解力」や「思考力」が求められています。特に、AIが生成する情報やニュースの真偽を見極める力は、今後ますます必要になるでしょう。
こんな人におすすめ!
- 教育関係者や保護者
- 自分の読解力を鍛えたい方
- AI時代に必要なスキルを学びたい方
まとめ:AI時代に求められる「シン読解力」の真価
AI時代に必要な読解力とは何か、どうやって身につけるのかを具体的に示してくれる『シン読解力』。ただ本を読むだけではなく、情報の背景を見抜き、自分の頭で考え、論理的に判断する力が必要です。
新井紀子氏の著書を通じて、私たち一人ひとりが「真の読解力」を手に入れることで、情報過多な社会の中でも確かな道を切り開くことができるでしょう。