マダガスカルで起きたクーデターまとめ―首都の治安や観光、旅行、日本との関係

時事問題

2025年10月、マダガスカルで政治的混乱が深刻化し、首都アンタナナリボでは大規模な抗議デモと軍の介入が報じられています。停電や断水を契機に広がった若者主導の抗議は、政府の腐敗や貧困問題への不満へと発展し、軍部の一部がデモ支持を表明する事態となりました。本記事では、最新のクーデター状況や背景、治安への影響、観光や旅行に関する注意点、日本との関係などを、信頼性の高い情報源をもとに詳しく解説します。政治と社会の現状を正確に把握し、安全な渡航や理解につなげる一助となる内容です。

はじめに-マダガスカルで起こったクーデター

2025年10月12日、マダガスカルの首都アンタナナリボで、アンドリー・ラジョエリナ大統領が出国したことが報じられました。これは、停電や断水に対する若者主導の抗議デモが広がる中、軍の精鋭部隊であるCAPSAT(軍人・兵站支援部隊)がデモ参加者を支持し、政府に反旗を翻したことによるものです。ラジョエリナ大統領は、身の安全を確保するために国外に避難したとSNSで述べていますが、辞任は拒否しており、現在の所在は明らかにされていません。

抗議活動は9月25日に始まり、電力や水道の供給不足に対する不満が広がる中、政府の腐敗や貧困問題への抗議へと発展しました。これらの抗議活動は、アフリカの他国での若者主導のデモに触発された「Gen Z Madagascar」運動として広がり、全国規模での反政府デモへと発展しました。国連によると、少なくとも22人が死亡し、100人以上が負傷しています。CAPSATは、軍の指揮権を掌握し、新たな軍の指導者としてピクラ・デモステーヌ将軍を任命しました。ラジョエリナ大統領は、これを「違法な権力掌握の試み」として非難していますが、軍の動きは止まっていません。

この政治的混乱を受けて、アメリカやイギリスなどの国々はマダガスカルへの渡航に対する警告を発出し、エールフランスやエミレーツ航空はフライトを一時的に停止しました。マダガスカルは1960年の独立以来、度重なるクーデターや政治的混乱を経験しており、今回の事態もその延長線上にあると言えます。今後の展開については、国内外の関係者による対話と調整が求められています。

第1章 マダガスカルとはどんな国か

アフリカ南東部のインド洋に浮かぶ**マダガスカル共和国(Republic of Madagascar)**は、世界で4番目に大きな島国だ。面積は約59万平方キロメートルで、日本の約1.6倍。人口は約2900万人。首都はアンタナナリボで、標高1,200メートルの高地に位置する。

かつてフランスの植民地だったマダガスカルは、1960年に独立を果たした。公用語はマダガスカル語とフランス語。宗教はキリスト教と伝統宗教が混ざり合う独自の信仰体系を持ち、先祖崇拝が今も強い影響を残している。

経済は農業が中心で、バニラ、コーヒー、クローブ、ニッケル、サファイアなどの輸出が主力。世界的なバニラの供給地として知られているが、国民の約7割が貧困層に分類され、政治の混乱やインフラ不足が長年の課題だ。

項目内容
面積約59万㎢(日本の約1.6倍)
人口約2900万人
首都アンタナナリボ
公用語マダガスカル語・フランス語
通貨アリアリ(MGA)
主な産業農業、鉱業、観光
宗教キリスト教・伝統信仰
政体共和制(大統領制)

マダガスカルは、アフリカ大陸から約400km離れており、その孤立した地理的条件から進化の過程でユニークな生態系を築いてきた。生息する動植物の約9割が固有種であり、世界中の生物学者やエコツーリストが憧れる“自然の宝庫”とされている。
一方で、貧困や政治腐敗、気候変動による干ばつなどが深刻化し、国際社会からの支援が欠かせない現状だ。


第2章 2024~2025年にかけての政変とクーデターの経緯

マダガスカルでは2024年後半から2025年初頭にかけて、**政治的混乱と軍の一部による反乱(事実上のクーデター)**が発生した。きっかけは2024年11月に行われた大統領選挙だった。

当時の現職であるアンドリー・ラジョエリナ大統領は、2009年にもクーデターを経て政権を握った経歴を持つ人物。再選を狙った今回の選挙では、野党側が「不正が行われた」と強く抗議。選挙後、一部の軍部が野党勢力に同調する形で蜂起したと報じられた。

2025年1月初旬には、首都アンタナナリボの軍施設で一部兵士が政府に反旗を翻す動きがあり、政府側との銃撃戦が発生。市民の一部も抗議デモを行い、一時的に交通が遮断された。政府は非常事態宣言を発令し、主要な放送局を軍が制圧するなど緊迫した状態が続いた。

BBCやAFPによると、この反乱は「全面的な政権転覆」には至らなかったものの、軍内の不満や政治不信が根強く存在することを示す出来事だったという。国際社会も注視しており、アフリカ連合(AU)は「憲法秩序の回復を求める声明」を発表。日本外務省も在マダガスカル邦人に対し、不要不急の外出を控えるよう注意喚起を出した。

政変の主な経緯(時系列)

年月出来事
2024年11月大統領選挙でラジョエリナ氏が再選宣言。野党側が不正を主張。
2024年12月首都でデモ拡大。治安部隊と衝突。
2025年1月一部軍部が蜂起し、政府施設を一時的に掌握。非常事態宣言発令。
2025年2月政府が反乱鎮圧を発表。野党指導者の一部が拘束。
2025年3月国際社会が政治対話の再開を呼びかけ。

この一連の混乱により、国内経済は一時的に停滞。輸送網の麻痺、首都での夜間外出制限、観光客のキャンセルなどが相次いだ。とくに観光業と鉱業への打撃が大きく、通貨アリアリは対ドルで急落した。


第3章 首都アンタナナリボの現状と治安

マダガスカルの首都アンタナナリボは、標高の高い丘陵地に広がる美しい街だが、クーデター以降、その風景には緊張感が漂っている。
2025年3月時点で、主要道路や市場はおおむね再開したが、政府機関周辺や軍施設付近では依然として武装警備が続いている

外務省の危険情報によると、アンタナナリボを含む首都圏では「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」が継続中。夜間の外出は強く控えるよう勧告されている。
ただし、完全な市街戦や無政府状態ではなく、現地の人々は日常生活を再開しつつあるという。

現地の声

地元紙「L’Express de Madagascar」によると、「子どもを学校に送ることはできるようになった」「バスは動き始めたが、燃料が高い」といった声が多く、市民の多くは“平常と不安のはざま”に暮らしている。
観光地では外国人を狙ったスリや強盗のリスクもあり、国連のデータでは2025年初頭の首都圏犯罪件数は前年同期比1.4倍に増加したとされる。

治安レベル比較(2025年時点)

国名危険情報レベル(外務省)主なリスク
マダガスカルレベル2(不要不急の渡航中止)政情不安・スリ・強盗
ケニアレベル2(一部レベル3)テロ・誘拐
タンザニアレベル1窃盗・詐欺
南アフリカレベル2強盗・差別暴力
モーリシャスレベル1比較的安全

とはいえ、マダガスカルはアフリカの中でも政治的に“穏やか”な時期が多く、現地の人々の温和な気質もあって、混乱が長期化する可能性は低いと見られている。
国際社会も仲介に動いており、2025年夏ごろには暫定的な挙国一致内閣が設立される予定だ。

第4章 観光立国マダガスカルに走った衝撃

マダガスカルは、近年「アフリカ最後の秘境」として観光業を国家戦略の柱に据えていた。
だが、2024年末の政変により、観光産業は大きな打撃を受けている。

1. 世界遺産とエコツーリズムの宝庫

マダガスカルには、ユネスコ世界遺産が3件存在する。

名称分類特徴
ツィンギ・デ・ベマラ厳正自然保護区自然遺産針のような石灰岩の奇岩群。絶滅危惧種のシファカが生息。
アンブヒマンガの丘文化遺産王国時代の首都跡。マダガスカル王朝の聖地。
アツィナナナの熱帯雨林群自然遺産多くの固有動物が生息。レムールやカメレオンの宝庫。

マダガスカル政府は、これらの遺産を軸に**「グリーン・ツーリズム」**(環境保全型観光)を推進しており、2010年代後半から欧州・日本からの訪問者が増えていた。特に「レムールを見に行く旅」は人気が高く、コロナ前には年間40万人が訪れた。

しかし、今回の政変と治安不安により、観光客のキャンセル率は70%超。フライトやホテルの稼働率が急落し、多くの観光ガイドや土産物業者が職を失った。

「観光が止まれば、村全体の収入がなくなる」と嘆くのは、バオバブ街道近郊の住民。観光客が消えたことで、手作りの木彫り工芸品や地元市場も閑散としているという。


第5章 日本との関係と支援の動き

マダガスカルと日本の関係は、1960年の独立直後から続く長いものだ。両国は外交関係樹立65年以上を迎え、日本はアフリカ諸国の中でも比較的早い段階でODA(政府開発援助)を開始している。

1. 日本の支援分野

日本は長年、マダガスカルに対し農業開発、教育支援、道路整備、医療協力を行ってきた。
たとえばJICA(国際協力機構)は、「農村開発プロジェクト」や「理数教育支援」などの技術協力を続けている。

また、アンタナナリボ大学では日本語講座が開講され、現地の若者の間で日本文化(特にアニメ・漫画・テクノロジー)への関心が高まっている。

支援分野内容担当機関
農業支援水田改善・灌漑整備JICA
教育支援理数教育強化プロジェクト文科省・JICA
道路・インフラ国道整備・港湾改修国交省
医療協力感染症対策・母子保健厚労省
文化交流青年海外協力隊・日本語教育外務省・JICA

日本のODAによる橋梁建設や灌漑事業は現地で高い評価を得ており、政変後も「日本は政治的に中立で誠実なパートナー」として信頼されている。


第6章 マダガスカルへの行き方と旅費の目安(2025年版)

マダガスカルは日本からの直行便がなく、アフリカの中でもアクセスが難しい国の一つだ。
しかし、その分「旅した人にしか見られない光景」がある。

1. フライトルート

日本からは、ドバイ経由またはアディスアベバ経由が一般的。
最短ルートでは成田→ドバイ(エミレーツ航空)→アンタナナリボ(マダガスカル航空)で約20時間。
エチオピア航空を利用すれば、成田→アディスアベバ→アンタナナリボのルートも可能だ。

出発地経由地到着地所要時間(目安)
成田ドバイアンタナナリボ約20時間
成田アディスアベバアンタナナリボ約19時間
関西ドバイアンタナナリボ約21時間

航空券の価格は往復で20〜28万円前後(燃油サーチャージ込み)。
政変後は便数が減少しているため、早めの予約が必須だ。

2. ビザと入国情報

2025年現在、日本人は観光目的で最大30日間の滞在ビザが必要
アンタナナリボ空港での到着ビザ取得が可能(50ドル前後)。
ただし、政情により条件が変動するため、渡航前に在マダガスカル日本大使館公式サイトの最新情報を確認することが重要。

3. 現地での費用感

項目目安金額(1日あたり)備考
宿泊5,000〜10,000円中級ホテル
食費1,500〜2,000円ローカル料理中心
交通費500〜1,000円タクシー・トゥクトゥク利用
ガイド代2,000〜5,000円英語ガイド
合計約10,000〜18,000円観光スタイルにより変動

4. 治安と注意点

  • 夜間の外出は避ける
  • 高額現金を持ち歩かない
  • SNS投稿は控えめに(政治的発言は特にNG)
  • 旅行保険は必須(医療体制が脆弱なため)

第7章 マダガスカルの未来に向けて

マダガスカルの自然と人々は、世界に誇る宝だ。
今回の政変はその歩みを一時的に止めたが、教育と観光を軸にした回復の兆しが見え始めている。

JICA関係者によれば、「若者の多くはSNSを通じて世界とつながりたがっている。教育とIT支援が鍵になる」と語る。
世界のNGOも動き出しており、環境保全と貧困対策を両立する“新しいマダガスカルモデル”を模索している。

タイトルとURLをコピーしました