台風25号の接近・通過に伴い、千葉県や東京都、神奈川県をはじめとする関東各地で激しい雨や暴風による冠水・土砂災害・住宅被害などが発生しています。ニュースや自治体のお知らせで「災害救助法が適用されました」という言葉を目にして、「それって自分たちの生活にどう関係するの?」「具体的にどんな支援が受けられるの?」と不安や疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
災害救助法は、被災された方の命と生活を守るために、国や自治体が応急的な支援を行うためのとても重要な法律です。
この記事では、今回被害の大きかった千葉・東京・神奈川の状況を踏まえながら、災害救助法の基本から、一番関心の高い「住宅の応急修理制度」、受けられる支援一覧、申請に必要な「り災証明書」の手続き、絶対に知っておくべき注意点まで、わかりやすく丁寧に解説します。
1. 台風25号の影響と「災害救助法適用」の意味
台風25号による関東エリアの被害状況
今回の台風25号は、東京都心や千葉県、神奈川県に暴風や猛烈な雨をもたらしました。千葉県内での浸水や冠水、神奈川県横須賀市などでの土砂崩れ、さらには東京都の大島町など島しょ部を含む広い地域で被害が生じています。
これを受け、千葉県の15市8町1村や東京都大島町などで災害救助法の適用が決定されました。
「災害救助法が適用される」と何が変わる?
自治体に災害救助法が適用されると、通常は市区町村や都道府県がそれぞれ行っている避難所の設置や支援物資の提供、住宅の補修費用などの負担を、国と都道府県が特別な財政支援(費用の大部分を負担)することになります。
これにより、被災した自治体は予算の心配をすることなく、迅速かつ手厚い応急支援を住民に提供できるようになります。つまり、「被災者が自力だけで生活を立て直すのではなく、公的な支援を即座に受けられる状態になった」ということです。
2. そもそも「災害救助法」とは?基本的な仕組み
災害救助法の目的
災害救助法は、大雨や地震、台風などの災害によって多数の人が被害を受けた(または受けるおそれがある)場合に、国・都道府県・市町村・日本赤十字社などが協力し、「応急的に必要な救助」を行って被災者を保護し、社会の秩序を保つことを目的とした法律です。
ポイントは「応急的」という部分です。家を新築し直すような長期的な復興資金を出す法律ではなく、「今すぐ生活するのに必要な安全と最低限の環境を確保する」ための緊急措置を担当しています。
他の支援制度(被災者生活再建支援法・災害弔慰金)との違い
災害で利用できる有名な制度にはいくつかの種類があります。混同しやすいので整理しておきましょう。
| 制度名 | 主な目的 | 支援のタイミング・性質 | 具体的な支援例 |
| 災害救助法 | 命と命の安全、最低限の生活の維持 | 発災直後(応急的・緊急) | 避難所の運営、食事の提供、住宅の応急修理、仮設住宅 |
| 被災者生活再建支援法 | 被災者の長期的な生活再建・住宅再建 | 復旧・復興期(中長期的) | 自宅の被害程度に応じて最大300万円の支援金支給 |
| 災害弔慰金支給法 | 災害で亡くなられた方への弔慰、重度障害への支援 | 事後(金銭支給) | 遺族への弔慰金(最大500万円)、障害見舞金 |
災害救助法が適用される基準
災害救助法はどんな災害でも自動で出されるわけではありません。「災害救助法施行令」で定められた基準に基づき、都道府県知事が適用を決定します。
- 住家の滅失(倒壊や流失など)による基準:市区町村の人口に応じて、一定数以上の住宅が全壊・倒壊した場合。
- 多数の者が生命・身体に危険を受ける基準(第4号適用):今回の台風25号のように、多数の人が避難して継続的に救助を必要とする場合(災害救助法第1条第1項第4号)。
3. 災害救助法で受けられる支援内容(全10項目)
災害救助法が適用されると、具体的に以下のような救助活動が「現物給付(または自治体手配)」を原則として行われます。
支援内容一覧
- 避難所の設置・管理:体育館や公民館、避難所用テントなどの確保・開設・運営費用。
- 応急仮設住宅の供与:プレハブ等の建設型仮設住宅や、民間アパートを自治体が借り上げる「みなし仮設住宅」の提供。
- 炊き出し・給食の実施:避難所等での弁当やパン、水などの手配・提供。
- 衣料・寝具・生活必需品の支給:毛布、衣類、日用品、生理用品、粉ミルクなどの提供。
- 医療・助産の提供:けがをした方の応急手当、診療、妊産婦への助産。
- 被災者の救出:危険な場所に取り残された方の救助費用。
- 住宅の応急修理:壊れた自宅の屋根やトイレ、台所などを最低限住める状態に修理(非常に重要!後述します)。
- 学用品の支給:小中学生が学校に通うために必要な教科書や文房具などの給付。
- 埋葬・遺体の捜索:死亡された方の捜索や埋葬に関する支援。
- 障害物の除去:住宅や道路に流れ込んだ土砂や倒木の撤去。
4. 最も気になる「被災住宅の応急修理制度」を徹底解説!
今回の台風25号のように、暴風で屋根瓦が飛んだり、大雨で床上・床下浸水したり、窓ガラスや外壁が破損した際に最も多く利用されるのが「被災住宅の応急修理制度」です。
住宅の応急修理制度とは?
自宅が浸水や強風で被害を受け、「そのままでは住めないけれど、必要な箇所を修理すれば引き続き自宅で暮らせる」という場合に、自治体が修理業者に依頼し、修理費用を一定額まで直接支払ってくれる制度です。
対象となる世帯(被害区分)
制度を利用できるのは、自治体が発行する「り災証明書」で以下の被害認定を受けた世帯です。
- 大規模半壊
- 中規模半壊
- 半壊
- 準半壊
- ※「全壊」は本来修理不能な被害ですが、応急修理を行えば住めるようになる場合は対象となることがあります。
支援の限度額(1世帯あたり)
住宅の被害程度によって、公的に負担してもらえる費用の限度額(上限)が決まっています。
| 被害の認定区分 | 1世帯あたりの限度額(税込) |
| 大規模半壊・中規模半壊・半壊 | 75万7,000円以内 |
| 準半壊 | 36万7,000円以内 |
| 緊急の修理(被害拡大防止) | 5万3,900円以内 |
※限度額を超える修理を行う場合、超えた分の費用は自己負担(自費)となります。
修理できる場所・できない場所
対象となるのは「日常の生活に欠かせない最小限度の部分」です。
- 対象になる部分:
- 屋根、外壁、ドア、窓サッシ(雨漏り・風雨防止)
- 床、壁(浸水した床板の張り替えなど)
- 炊事場(台所)、便所、風呂、洗面所などの衛生・水回り設備
- 電気・ガス・水道の配管・配線設備
- 対象外になる部分:
- 門扉やブロック塀、庭の手入れ
- 物置、車庫、カーポート
- 畳の高級化やグレードアップ工事
- 空き家や店舗部分
5. 【超重要】応急修理制度で絶対にやってはいけない失敗と落とし穴
応急修理制度を利用するにあたって、最も多く発生する失敗があります。以下のポイントは必ず覚えておいてください。
①【最重要】自治体を通さずに「自分で直接契約・支払い」をしない!
この制度は「自治体(市役所・区役所など)が修理業者に発注し、自治体から業者へ費用が支払われる」という仕組みです。
もし、被災して焦るあまり自分で業者と契約して代金を先に支払ってしまうと、後から自治体に申請しても費用が還付(償還払い)されません。
必ず「市の応急修理制度を使いたい」旨を自治体や担当窓口に相談し、指定の手続きを経てから着工してもらう必要があります。
② 写真を撮る前に片付け・解体をしない!
制度の利用申請やり災証明書の発行には、被害状況がわかる写真が必須です。
片付けや清掃、修理を始めてしまうと被害の程度が判定できなくなり、制度が使えなくなる恐れがあります。
📸 被害写真を撮影するときのポイント
- 全景:家の外観4方向(引きで全体が入るように)。
- 浸水高:浸水した痕跡(壁の線など)にメジャーを当てて高さがわかるように。
- 室内の被害:床、壁、ドア、天井、設備(キッチンやトイレ)ごとのアップ。
- 屋外の被害:屋根瓦のズレ、外壁のひび割れ、ガラス割れなど。
③ 台風に便乗した悪質業者・点検商法に注意!
台風直後は「近所で工事をしている者ですが、お宅の屋根が浮いていますよ」「今なら災害救助法で全額タダで修理できます」などと訪問してくる悪徳業者(ブルーシート詐欺・高額請求トラブル)が急増します。
- その場で絶対に契約・捺印しない!
- 自治体の窓口や地元の信用できる工務店、建設協同組合などにまず相談してください。
6. 支援を受けるための第一歩!「り災証明書」の取得手順
災害救助法に基づく支援や各種見舞金、保険金の請求など、あらゆる手続きの起点となるのが「り災証明書(被災証明書)」です。
「り災証明書」と「被災証明書」の違い
- り災証明書:住家(人が住んでいる家)の被害程度(全壊・大規模半壊・半壊・準半壊など)を自治体が認定して証明するもの。
- 被災証明書:カーポート、物置、ブロック塀、店舗、車など「住家以外の財産」が被災したことを証明するもの。
取得までの流れ(ステップ4)
【Step 1】被害状況の写真撮影
└ 片付けや清掃を行う前に、家の外観・室内・浸水痕などを撮影する
【Step 2】自治体窓口(またはオンライン)で申請
└ 市役所・区役所の特設窓口や公式LINE、マイナポータル等で申請
【Step 3】自治体による現地調査・認定
└ 調査員が現地を訪問し、基準に基づき被害度(全壊〜準半壊等)を認定
【Step 4】「り災証明書」の交付
└ 交付された証明書を使って、応急修理や各種支援制度を申請
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 賃貸アパートや借家に住んでいる場合も制度は使える?
A. 原則として、持ち家(所有者)が対象となります。
ただし、賃貸住宅の場合でも、大家さん(所有者)が同意した上で自治体の応急修理制度を利用して修繕を行うケースがあります。賃貸にお住まいの方は、まず管理会社や大家さんに連絡し、被害状況を伝えて自治体窓口に相談してもらいましょう。また、仮設住宅(賃貸型応急住宅など)の供与制度は借家人でも条件を満たせば利用可能です。
Q2. 災害救助法が適用されていない隣の市に住んでいる場合はどうなる?
A. 自治体独自の支援制度や、被災者生活再建支援法などが利用できる場合があります。
災害救助法が適用されないエリアであっても、被害を受けた自治体ごとに独自の「見舞金」や「住宅補修補助金」を用意しているケースが多いです。適用外だからと諦めず、お住まいの市役所・区役所の防災担当・福祉担当窓口へ問い合わせてみてください。
Q3. すでに雨漏りがひどく、生活に支障があるため応急処置をしたい場合は?
A. 「被害拡大防止のための緊急修理」制度(上限53,900円程度)が用意されている場合があります。
また、シート掛けなどの緊急養生について自治体やボランティアセンターが対応してくれることもあります。いずれの場合も、作業前に必ず写真撮影を行うことを忘れずに実施してください。
台風25号による突然の被害で、不安な日々を過ごされていることとお察しいたします。
災害救助法をはじめとする公的支援は、「困っている被災者の方が一日も早く安心して暮らせるようにする」ための大切な権利です。「自分くらいの被害で申請していいのかな…」と遠慮せず、まずは「写真をしっかり撮影すること」、そして「お住まいの自治体窓口(市役所・区役所・町役場)に相談すること」から始めてみてください。
復旧活動を進める際は、くれぐれも足元や屋根上での作業事故、熱中症、悪質業者からの勧誘に注意しながら、安全第一で行動していきましょう。
困ったときの相談窓口一覧
- お住まいの自治体代表窓口(市役所・区役所・町役場・村役場)
- 消費生活センター(悪質業者トラブル相談):消費者ホットライン
188(局番なし) - 法テラス(被災者向け無料法律相談):
0570-078374


