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秋の夜長におすすめの本10選【2020年最新版・直木賞芥川賞受賞作品】

秋の夜長におすすめの本

食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋……。「○○の秋」と言われるように、秋はなにをするにも良い季節とされています。

ナビこ
ナビこ
なかでもおすすめは・・・「読書の秋」!!
ナビまる
ナビまる
心地のいい秋の季節、ゆっくりと本の世界に浸ってみるのはいかがですか?

そもそも「読書の秋」と言われるようになった由来をご存知ですか。

中国・唐時代の韓愈(かんゆ)が残した漢詩の一節「燈火稍く親しむ可く」という言葉が広まったからだとされています。

この「燈火稍く親しむ可く」は、「秋の夜は涼しさが気持ち良いので、灯りに照らして読書をするにはいいのもだ」という意味。

この漢詩は、韓愈が息子に読書の大切さを教えるために読んだと言われていますが、多くの人に共感され、広まっていきました。

今でも秋の夜は長く、涼しい気候です。韓愈の時代と同じく、ゆっくりと集中して本を読むにはちょうどいい季節ですよね。

今回はそんな秋の夜長に読みたいおすすめの本を、近年文学賞を受賞した小説作品の中からご紹介します。

話題になっていたけれど、読んだことがないな……という方も、この機会にぜひ手にとってみてはいかがですか。いつもと違った選択視点をもつと、思いもよらなかった読書体験ができますよ。

 

むらさきのスカートの女/今村夏子

2019年上半期の芥川賞受賞作品です。

芥川賞は年2回発表される、直木賞と並んで日本で最も有名な文学賞です。大正時代を代表する小説家・芥川龍之介の業績を記念し、菊池寛が1935年に直木三十五賞(直木賞)と一緒に創設しました。新人作家による発表済みの短編・中編作品が対象で、受賞作が選ばれます。

近所に住む「むらさきのスカートの女」のことが、気になって仕方のない主人公は、彼女と「ともだち」になるために、彼女が自分と同じ職場で働きだすよう誘導して……。という物語です。

この作品は「面白さ」を説明することが難しく、読了後も気付いたらこの本のことを考えてしまう……という不思議な魅力があります。中編程度の長さなので、日常的に読書をしている人であれば3時間程度で読み切ってしまえる作品だと思います。

 

首里の馬/高山羽根子

2020年上半期の芥川賞受賞作品のひとつです。

物語の舞台は、沖縄の古びた郷土資料館。中学生の頃から資料の整理を手伝っている主人公・未名子は、世界の人たちにオンライン通話でクイズを出題するオペレーターの仕事をしています。ある台風の夜、幻の宮古馬が庭に迷い込んできて……物語が動き出します。

残されている島の全記録を、世界のすみずみまで届けたい、という願いが胸にせまる作品です。

ゆっくりじっくり向き合って読み進めたい1冊。

 

破局/遠野遥

2020年上半期の芥川賞受賞作品のひとつです。著者の遠野さんは28歳で芥川賞を受賞し、話題になりました。

ラグビー、筋トレ、恋愛。主人公が、ふたりの女性を行き来するいびつなキャンパスライフを描いた作品。

文体や流れが読みづらい、という声もありますが、読み進めていくと日常的な描写に引き込まれていくと思います。一見「普通な人」「良い人」に透けてみえる狂気、日常の停滞感、不穏さ。独特の雰囲気が漂う作品です。

 

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び/大島真寿美

2019年上半期の直木賞受賞作品のひとつです。

直木賞は芥川賞と同じく、上半期下半期と年2回発表されます。大衆文学を対象とした文学賞で、芥川賞に比べて直木賞は、ある程度キャリアのある作家を対象としているといわれています。

浄瑠璃作者・近松半二の生涯を描いた物語。地の文と会話文が溶け込むような独特の文体で書かれています。

人形浄瑠璃や歌舞伎の草創期の道頓堀が舞台です。人形浄瑠璃の専門的な描写はあまりなく、馴染みがない人でも、近松半二という人間の物語として、すんなり読むことができると思います。

浄瑠璃で名を残した人物が多数登場するので、現在に繋がる伝統芸能の一端を知り、より観劇を楽しむための作品としても魅力的です。読了後、タイトル「渦」の意味についても深く考えてみたくなるでしょう。

 

熱源/川越宗一

2019年下半期の直木賞受賞作品です。

日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人という二人の出会いと人生を描いた作品。実在の人物をモデルに、歴史的事実を織り交ぜながら語られる大作歴史小説です。

文明を押し付けられ、アイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、自分たちが守り継ぎたいものは何か、自らに問い続けます。

虐げられた少数民族、弱小国家……。そこに生きる人たちは何を選び、何に抗い、受け入れるのか。キャラクターの心情描写やアイヌ文化の活写は細やかながら、スケールの大きい作品になっています。

「熱源」というタイトルの通り、読者に強い「熱」を伝える作品だと思います。

 

少年と犬/馳星周

2020年上半期の直木賞受賞作品です。

1人の人間と、1匹の犬。犬と人の関係性が丁寧に描かれた連作短編集となっています。

家族のために犯罪に手を染めた男と犬。故国を目指す窃盗団の男と犬。壊れかけた夫婦と犬。どん底の娼婦と犬。死期がせまる老猟師と犬。震災のショックで心を閉ざした少年と犬。1匹の賢い犬が様々な人たちとつながっていくようにして、物語が描かれます。

犬とともに生きるということは、どういうことなのか。犬の「多聞」の優しさや真摯さ、人間との絆が存分に感じられる1冊です。犬好きな人はもちろん、誰もが涙してしまうほどの感動作。

 

平場の月/朝倉かすみ

2019年の山本周五郎賞受賞作品です。

山本周五郎賞は、昭和期に活躍した山本周五郎にちなんで1988年に創設された文学賞です。山本は、主に大衆文学・時代小説の分野で優れた作品を残しました。前年4月から当年3月までに発行された単行本が主な選考対象となっています。

ある男女が35年ぶりに再会。そこから始まる二人の約2年が描かれた大人の恋愛小説です。

LINEやコンビニといった現代のものが中高年である二人の日常に溶け込まれている点が、より物語にリアリティを持たせています。

中年になった二人が、不器用に心の隙間を埋め合う様子や、その切ない感情に、心を揺さぶられます。

どの年代の人が読んでも、自分のことを振り返り、自分の人生や恋愛を語りたくなるような作品だと思います。

 

アキちゃん/三木三奈

2020年度の文学界新人賞受賞作品です。また、2020年上半期の芥川賞候補作にもなっています。こちらはまだ単行本として刊行されておらず、「文學界」2020年5月号に掲載されました。短編の純文学作品です。

「わたしはアキちゃんが嫌いだった」で始まり、その後もどれだけ嫌ってるの? とばかりに悪口が放たれていきます。小学生の頃の女子の姿や揺れ動く感情、それに伴う行動が独特の表現で描かれます。誰もがどこかで、同じよう気持ちを持ったことがあるなと、自身の子供時代を思い出すのではないでしょうか。

純文学ですが、短い作品で、とても読みやすいと思います。

 

君が異端だった頃/島田雅彦

2019年読売文学賞、小説部門の受賞作品です。

読売文学賞は読売新聞社が制定した文学賞で、1949年に開始されました。小説、戯曲・シナリオ、随筆・紀行、評論・伝記、詩歌俳句、研究・翻訳という6部門の分類で受賞作品が決定されます。対象作品は、過去1年間に発表されたものとなっています。

『君が異端だった頃』は、数々の文学賞を受賞している島田雅彦さんが描く、自伝的青春私小説となっています。

幼年期から、修業時代、鮮烈だった文壇デビュー。戦後の文学を彩った文豪たちとの愛憎劇や自身の華麗な遍歴、恋愛模様などが活き活きと描写されています。

著者の行動力の高さや旺盛な好奇心に、圧倒されるような、元気をもらえる作品です。

 

宿借りの星/酉島伝法

2019年の日本SF大賞受賞作品のひとつです。

日本SF大賞は、日本SF作家クラブが1980年に創設した文学賞です。年1回、9月1日から翌8月31日までの1年間に発表された作品の中から受賞作品が選定されます。2014年度以降は、一般の読者やファンからもTwitterとメールで候補作エントリーを募集しています。

物語の舞台は、かつて人間を滅した異形の殺戮生物たちが縄張りのような国を築いている惑星。罪を犯し、国を追われた主人公・マガンダラは、放浪の末たどり着いた場所で、滅んだはずの人間たちによる壮大で恐ろしい、惑星の運命を揺るがす企みを知ってしまいます。その危機に立ち向かうために、マガンダラは祖国へ潜入をすることに……。

SFらしい世界観がとても魅力的な1冊。ですが、ストーリーは身近に感じられるものだと思います。イラストレーターでもある著者の挿絵も楽しめて、より惑星への想像も広がります。

ゆっくり深く物語に入り込めて、「これぞフィクション!」な没入感を楽しめる作品になっています。

 

気になる作品はありましたか?

短い作品もありますので、普段あまり本を読まない方も、ぜひ手にとって挑戦してみてください。

ナビこ
ナビこ
秋の夜長の過ごし方として、ゆっくりと読書する時間を持てたら素敵よね!