最近、テレビや新聞、CMでも取り上げられ話題になっている「2020年教育改革」。今回の記事では「国語」に焦点をあてて、学校の授業や入試問題がどのように変わっていくのかを、小学校・中学校・高等学校それぞれについて述べていきたいと思います。
2020年教育改革とは?
そもそも2020年教育改革とはなんでしょうか。大きく次の二つの柱を指します。
学習指導要領が約10年ぶりに改訂
学習指導要領とは、国が定める学校教育の方針のようなものです。
学習指導要領にしたがって、各学校で学習シラバスやカリキュラムが組まれ、授業が実施されていきます。
約10年周期で改訂がなされてきた学習指導要領が、2020年前後に全面改訂されることが2020年教育改革の柱の一つとなります。
学習指導要領はいつ変わるの?
幼稚園 | 2018年度~ |
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小学校 | 2020年度~ |
中学校 | 2021年度~ |
高等学校 | 2022年度~(年次実施) |
学校によって改訂スケジュールが異なっており、幼稚園ではすでに新しい学習指導要領のもとに学校指導がなされています。
小学校や中学校についても、いきなり学習指導要領を全面実施すると現場の先生たちが困惑するなど準備期間が必要なことから、「移行措置期間」として全面実施よりも一年前倒しでスタートしています。
学習指導要領はなにが変わるの?
小学校 | ・小学3・4年生「外国語活動」 ・小学5・6年生「英語教科化」 ・「プログラミング教育」開始 |
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中学校 | ・英語授業はすべて英語で実施 |
高等学校 | ・「公共」「歴史総合」等の新科目創設 |
これらは一部にすぎませんが、改訂の大きな方針としては、子どもたちが将来の社会変化に対して、自らで考え、判断し、解決して生きていく力を培えるように学校教育そのものを替えていくねらいがあります。
センター試験が廃止され、大学入学共通テストに
これまで大学入試にはセンター試験が実施されていましたが、2020年教育改革によって廃止され、新に「大学入学共通テスト」という試験に取って代わります。
2021年1月が初めての実施年となり、
記述式問題の導入(数学と国語)
英語の4技能評価(話す・書くが加わる)
テストの在り様が大きく変わることから、これまでと同じようなテスト対策では対応できなくなります。
最近では、導入予定だった英語の民間試験(TOEICや英検など)が正式に見送られることにもなり、受験生や予備校などの学習塾が対応に追われています。
「国語科」学習指導要領改訂のポイント
国語の新しい学習指導要領(平成29年度告示)が現行の学習指導要領(平成20年度告示)からどのように変わるのかをまとめています。大きく変わるのは、学習指導要領の「目標」と「内容」の二つ。ただし、実際の授業がこの改訂により大きく変更されるわけではないので、親や保護者の方々はあくまでも知識として知っていればいいと思います。
(参考:文部科学省「学習指導要領解説/http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm」)
まず「目標」では「なにができるようになるのか(資質・能力)」をより明確にしています。
新しい目標 | 「国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力の育成を目指す」 |
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従来の目標 | 「国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる」 |
そして、その「資質・能力」を次の3つの観点で整理しています。
・知識及び技能
・思考力,判断力,表現力等
・学びに向かう力,人間性等
つぎに「内容」では「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力」の二つの柱に構成し直されました。
新しい内容 | ・知識及び技能 (1)言葉の特徴や使い方 (2)情報の扱い方 (3)我が国の言語文化 ・思考力,判断力,表現力 A 話すこと・聞くこと B 書くこと C 読むこと |
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従来の目標 | ・話すこと・聞くこと ・書くこと ・読むこと ・〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕 |
この変更は小学校、中学校、高校で共通した変更となります。
それでは、各課程での「国語はどう変わるか」を次項からみていきたいと思います。とくに親や保護者の方が知っておくべきこと、という観点で述べていきます。
小学校国語が2020教育改革で変わること
⑴授業で「語彙力を伸ばす学習」が充実されるようになる
「小学校低学年の学力差の背景には語彙力の差がある」という指摘が中央教育審議会答申でなされたこともあり、言葉の意味や使い方を理解するための学習が今後ますます充実されるようになります。
⑵授業で「情報を整理する能力を高める学習」が充実されるようになる
「教科書の文章を読み解けていない」という指摘が中央教育審議会答申でなされたこともあり、文章に書かれている情報を適切に読み取り、整理・表現していく力を伸ばす学習が充実されるようになります。
⑶「考える力」をつける学習が重視される
すべての領域(「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」)で「自分の考えを持つ」ことが重視されるようになります。
論理的思考力が必要になる!
⑷都道府県名で用いる漢字を4年生で学習することになる
日常生活での必要性から、都道府県名で用いる漢字20字が新たに4年生の配当漢字に加わります。これらの漢字は学習指導要領の移行措置として、すでに学習がスタートしています(2018年度より開始)。なお、4年生に新しい漢字が加わったことにより、5年生と6年生での配当漢字も変更(移動)がなされています。
⑸読書活動が充実されるようになる
「読書は国語の資質や能力を高めるうえで重要である」とする指摘が中央教育審議会答申でなされたこともあり、読書の重要性が高まりました。「読むこと」とあわせて、学校図書館の本を利用した学習活動が増えるようになります。
読書の効果とは?
⑹授業は主体的・対話的な学習が中心となる
もともと「アクティブ・ラーニング」という言葉で示されていたものが、最終的に「主体的・対話的で深い学び」として新学習指導要領では示されました。今後の学校の授業では、教師が一方的に学習を進めるのではなく、生徒自らが問題について考え、他者と意見を交わし、学習を進めていくことになります。
中学校国語が2020教育改革で変わること
中学校の変更点は前述の小学校と共通しています。小学校で学習したことを、系統的かつ段階的に中学校でも学習していき、資質・能力として定着させていくことになります。
高校国語が2020教育改革で変わること
高校の変更点も小学校・中学校と共通しています。一方で、従来の高校国語では次のような課題があるとされました。
「教材の読み取り」が学習の中心となっており、「話すこと・聞くこと」「書くこと」が十分にされていない
古典の学習は社会での関連が薄く、学習意欲が高まらない
これらの課題を受けて、以下のように科目構成が変更されることになります。
現在の学習指導要領 | 新しい学習指導要領 | |
必修科目 | ・国語総合(4単位) | ・現代の国語(2単位) ・言語文化(2単位) |
選択科目 | ・国語表現(3単位) ・現代文A(2単位) ・現代文B(4単位) ・古典A(2単位) ・古典B(4単位) |
・論理国語(4単位) ・文学国語(4単位) ・国語表現(4単位) ・古典探求(4単位) |
必修科目、選択科目ともにすべて新設されることとなり、大きく内容が変更されます。
大学入学共通テスト(国語)の記述式問題の導入
センター試験では全問がマークシート方式での選択問題でしたが、大学入学共通テストでは記述式問題が3問出題される予定です。また、試験時間もセンター試験の80分から100分に拡大され、200点+記述式の評価がされることになっています。
(2018年12月27日大学入試センター発表「大学入学共通テストの導入に向けた平成30年度試行調査(プレテスト)マーク式問題に関する実施状況(速報)について」より)
試行調査(平成30年度実施)の問題では、記述式問題は以下のような形式・内容となっています。
問1:一つの文章を読み取り、指示している内容について、30字以内で記述する。
問2:二つの文章を読んだうえで、整理・要約された内容の空白部分を40字以内で記述する。
問3:複数の文章を比較し、条件にしたがって80字から120字以内で記述する。
2020年教育改革による中学の授業や高校入試の変化
大学入試が変わることで高校入試も変わっていくことが予想されます。すでに一部の高校入試では、知識を問う問題だけでなく、思考力や判断力、表現力を問う問題も出題し始めています。
新学習指導要領の「未来社会で生きるための資質・能力を育む」ためにも、暗記中心の試験ではなく、知識をもとに自ら考え表現する力を測るような試験にしていく必要があります。
試験が変わらなければ、その前の教育課程での授業のあり方はなかなか変わりにくいはずです。そういった意味でも、小学校から大学までを一貫した理念のもとで教育をおこなうという高大接続改革によって、今後さまざまな変化が起きてくるでしょう。