学校教育

全国学力テスト中止の理由と学校への影響について。東日本大震災と熊本地震以来。

全国学力テスト中止の理由と影響

4月16日に緊急事態宣言が7都府県から全国に拡大されたことを受けて、政府は延期としていた全国学力テストの中止を決定しました。

3月17日に新型コロナウイルス拡大により一斉休校を要請し、同日文部科学相より「2020年度の全国学力テストの実施を延期とする」と発表されていましたが、とうとう正式に中止となりました。

そこで本日は急遽、全国学力テストが中止となった理由や背景、その後に想定される影響などについてまとめました。

この記事からわかること

・全国学力テストとはなにか
・全国学力テスト中止の理由、背景
・全国学力テスト中止の学校への影響

 

全国学力テストとはなにか?

全国学力テストとは

全国学力テストとは、正式名称を「全国学力・学習状況調査」といいます。

2007年より現行テストが開始され、生徒の学力低下を抑制する理由から、毎年4月の第3または第4火曜日に全国の小学6年生と中学3年生全員を調査対象として実施しています。

全国学力テストの形式

全国学力テストは3科目(国語・数学(算数)・理科)から、次の2種類に分けて出題されます。

●A問題…知識力を問う問題
●B問題…思考力・活用力を問う問題

また、テストとは別に、生徒の学習状況を調査するねらいから、児童生徒の学習環境や生活環境に関するアンケートも同時に実施しています。

全国学力テストの問題点

全国学力テストの実施については、かねてより次の3点が問題点として挙げられてきました。

成績を公表することで競争原理の導入になる

全国学力テストの結果は、政府からは都道府県単位での成績公表に留め、学校ごとの成績公表については各自治体の教育委員会に一任されています。

これは、自治体間や学校間での競争が激化することを避けるためですが、昨今の市民の情報公開への意思の高まりもあり、自治体によっては学校ごとの成績も公表するという事例が出ています。

民間企業が実施、管理する

全国学力テストを実施、管理するのは入札によって決められた民間企業です。毎年入札が行われますが、現行テストが開始された2007年以降、小学校は「ベネッセコーポレーション」、中学校は「内田洋行」がその多くを実施してきました。

もちろん、過去数年間の成績推移も調査することから、同じ企業が管理するほうがより正確なデータを得られやすいのですが、テストの成績だけでなく生活環境なども調査することから、民間企業に受託することに懐疑的な意見も多くあります。

生徒や教員の負担がある

全国学力テストは4月の新学期という慌ただしい時期に、全国の小学校、中学校で実施されます。

実施にあたっては学校の先生が管理することから、テストを受検する生徒はもちろん、教員にとっても負担が大きく、その一方でテスト結果が返ってくるのは約5か月後の夏休み明けとなるため、果たして生徒にとって意味があるのか疑問に思う保護者も多いのが事実です。

 

全国学力テストが中止となる理由、背景

全国学力テスト中止の理由

全国学力テストが中止となる理由は、緊急事態宣言の拡大によって学校再開の目途が5月GW明けとなったからです。

3月の延期発表のときには、全国一斉休校によって学校の準備が整わないことを延期の理由としていましたが、すでに4月も休校延長が決定しており、現時点でさえ本来4月から始まる新学期の授業ができておらず、学習に遅れが生じています。

仮に、5月から新学期がスタートできたとしても、全国学力テストによって一日ないし二日をテストに充てることは現実的ではなく、まずは本来の年間学習計画に沿った臨時カリキュラムをこなすことに現場は精一杯となります。

全国学力テストは過去に2回中止となった

全国学力テストはこれまでも計2回中止となった事例があります。

1回目は東日本大震災が起こった2011年で、この年度の調査は事実上中止となりました。

2回目は熊本地震が起こった2016年で、この年度の調査は熊本県、宮崎県、大分県の一部の学校では中止となっています。

全国学力テスト中止による影響

全国学力テストは競争原理の導入となるという実施反対意見がある一方で、都道府県や自治体によっては全国学力テストの成績向上を教育目標として取り組んでいるところもあります。

たとえば、大分県では2011年度までに「学力の九州トップレベル」を県の教育目標として掲げ、それに向けて教育委員会や学校が意欲的に取り組んでいましたが、この年の東日本大震災の影響による中止で目標達成は不可能となりました。

全国学力テストについては、学校や教師の評価に利用されることも多く、もちろんそれは反対意見も多くある一方で、生徒や教師にとっては一つの評価指標ともなっています。

今年度から学習指導要領も10年ぶりに新しくなり、新たに新課程として教科書も一新されるなかで、実施年度初期の全国一律データが取得できないことは、その教育課程を評価するときの基礎データとしては不十分にならざるを得ないでしょう。

しかし、教育現場もカリキュラムや指導案の再編に日々追われるなか、教師や生徒の負担増となる全国学力テストを中止に踏み切った判断は間違っていないと思います。

5月以降の学校再開に向けて、今後さまざまな動きが起こってきますが、常に教育現場に寄り添ったかたちで、なによりもこの状況で不安を抱える生徒や保護者に対して、少しでも安心して学校に通わせられるような対応がなされることを願います。

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