2019年度より、国際的な視点をもって地域社会の発展に寄与する「グローカル推進校」に全国20の高校が文科省によって指定されました。
SDGsの17の目標のなかには、国内のあらゆる人や地域が格差なく、健康的に安心して暮らせる持続可能な社会を目指しており、その実現のためには地域社会で活躍していける「グローカル人材」の育成が急務となっています。
そこで今回は、グローカル人材を輩出するために取り組みが開始された「グローカル教育」について詳しくまとめました。
・グローカル教育とはなにか
・グローカルとグローバルの違い
・グローカル型推進校の高校
・グローカル教育と地方創生
目次
グローカル教育とは
グローカルとは、「Global(グローバル、世界的な)」と「Local(ローカル、地域的な)」を組み合わせた言葉で、国際的な視点を持って地域社会に貢献する取り組みのことを指します。
society5.0の時代においては、世界で活躍していけるような人材を育てるだけでなく、高齢化が進む地域社会の活性化も担っていけるような若い人材も育てていかなければなりません。
そのような人材を輩出するために、2019年頃から高校を中心に政府や自治体、企業が協力して取り組んでいるのが「グローカル教育」なのです。
グローバル人材とグローカル人材の違い
グローバル人材とは、その名のとおり国際的な視点を持って世界で活躍していける人のことをいいます。活躍する場所は国内、海外と限定しませんが、競い合う相手は世界各地の人々や企業です。
一方、グローカル人材とは、国際的な視点を併せ持ちながら、日本国内の地域社会に活躍の場を持つ人のことをいいます。
低迷する地域経済や高齢化・過疎化が進む地域社会といった、さまざまな課題を解決していくために、世界的な情報や技術を取り入れて先導していくことができる次世代リーダー的存在を指しています。
グローカル教育と高校での実践例
2019~2021年度の3年間、地域の課題をもとに体験と実践を伴った探究的な学びを実現するねらいから、高等学校20校(公立14校、私立6校)が「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」の「グローカル型」指定校として選ばれました。
・北海道登別明日中等教育学校
・九里学園高等学校
・山形県立山形東高等学校
・千葉市立稲毛高等学校・附属中学校
・昭和女子大学附属昭和高等学校
・福井県立丸岡高等学校
・長野県長野高等学校
・静岡県立榛原高等学校
・星城高等学校
・名古屋国際中学校・高等学校
・三重県立宇治山田商業高等学校
・兵庫県立柏原高等学校
・奈良県立畝傍高等学校
・育英西中学校・高等学校
・和歌山信愛中学校・高等学校
・岡山県立岡山城東高等学校
・香川県立高松北高等学校
・愛媛県立松山東高等学校
・高知県立室戸高等学校
・宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校
グローカル教育の中心を高校に置いた背景には、2022年度の新課程(すでに移行措置で一部実施されている)から新たに必修科目となる「総合的な探求の時間」とも関係があります。
「総合的な探求の時間」とは、生徒が主体的に課題を設定し、解決のための情報を収集・整理していく探求的な活動に取り組む共通必修科目です。もともとは「総合的な学習の時間」であったものが、新課程から「探求」に主眼を置いて改訂されました。
地域社会と密接な関係を持つ学校をグローカル教育の中心とすることで、企業や自治体が連携しやすくなり、生徒が「探求」の授業を通して、地域が抱える様々な課題に国際的視点を持って取り組むことが可能となっています。
実際にどのようなグローカルな取り組みがされているのか、二つの学校の事例をご紹介します。
グローカル教育の取り組み①「奈良県立畝傍高等学校」
奈良県立畝傍高等学校」
SGH(スーパーグローバルハイスクール)認定校でもあった本校では、「未来創造会議」という生徒による研究発表やディスカッションが毎年実施されています。
2019年度には「里山革命」「奈良県の観光振興」「小学生と地元を学ぶ」といった発表が英語で行われ、その発表を受けて学生どうしが意見交換や討議を行いました。
ほかにも、「郷土の文学」「食品ロスと子ども食堂」といったテーマでの課題研究発表もあり、生徒が主体的に地域が抱える課題を考える場が形成されています。
グローカル教育の取り組み②「高知県立室戸高等学校」
高知県立室戸高等学校」
室戸市では、少子高齢化や雇用の減少が課題となっていましたが、地域が「室戸ユネスコ世界ジオパーク」に認定されたことを受けて、その国際的なネットワークを生かして地域の発展を市民と高校生が考える取り組みを行っています。
オーストラリアやマレーシアの高校生を短期留学生として受け入れたり、「海外交流アドバイザー」に支援してもらってマレーシアに日本の高校生たちが訪問したりするなど、海外交流の場を積極的に生徒に提供しています。
「ジオパーク学」という授業も設定し、地域経済を活性できるようにジオパークを活用する方法を高校生と地域住民が協働して考えるなど、持続可能な開発のための教育が実践されています。
グローカル教育と地方創生について
グローカル教育は2019年度に推進校が指定されたことで初めて全国規模となりました。言うならば「生まれたての教育事業」であり、今後3年間の第一期指定校の実績を踏まえて、具体的なカリキュラム開発をしていきます。
また、グローカル教育推進校に指定されると、1校あたり500万円を上限とする事業費が支給されます。生徒を海外の企業や学校に研修派遣することも可能となり、従来では思いもつかなかった「新しい視点での教育」が生まれ、地方を活気づかせてくれる若い人材が輩出されることに期待が持てます。
この教育モデルが生まれた意義はとても大きく、時を同じくして、2019年度から国や自治体、企業の間でSDGs(持続可能な開発目標)が浸透し始め、商品やサービスでその理念が少しずつ反映されつつあることにも好影響をもたらすでしょう。
まさしく教育を基盤として、経済や社会が新たな時代に向かって一丸となって歩んでいるという実感をひしひしと感じ取ることができます。
地域社会には地域特有の、標準化がかなわないために共感も得にくく、取り沙汰されにくい課題が数多く存在していますが、これからの教育や社会は個別最適化が基本の考え方であるように、地域の課題一つ一つに対しても後回しにせずに、解決手段を議論していく必要があります。
そして、それらの課題はそこで暮らす地域住民や自治体、企業だからこそ解決策が見いだせるものであり、その中核を学校などの教育機関が先導していかなければなりません。
世界規模の幅広い視野を取り入れつつ、地域の課題解決への道を先導していくリーダーとして、これからの学校教育がどのように変容していくのかを、期待をこめて見守っていきたいと思います。
昨年の国公立大学の現役合格6,000人、私立大学の現役合格20,000人突破!休校中の復習から共通テスト対策までが自宅でできる進研ゼミに入会する高校生が増えています。塾と比べて圧倒的コスパを実現できるので、まずは無料資料請求をしてライバルと差をつけよう!