「STEAM教育」という言葉を耳にした人はまだ少ないかもしれませんが、2020年以降の学校教育現場ではおそらく主流になってくる教育方法だといえます。小学校プログラミング教育の必修化やGIGAスクール構想の開始、最近では、STEAM教育の前身であるSTEM教育を入試に取り入れた「STEM入試」を実施する中学校もあるなど、徐々に広がりを見せています。
そこで今回は、「STEAM教育」について小学生の子どもを持つ保護者の方が気になるポイントをまとめました。
STEAM教育とはなにか
STEAM教育とSTEM教育のちがい
STEAM教育の小学校の事例・教材
「未来の教室」実証実験
目次
STEAM教育とは
STEAM教育(スティーム教育)とは、子どもたちがICT社会や国際社会で活躍していけるように、科学技術や数学的な知識・技能を習得させつつ、それらを駆使して新たな価値を創造し表現できる人材育成を目指す新しい教育フレームのことです。
Science…科学
Technology…技術
Engineering…工学
Art(s)…芸術・教養
Mathematics…数学
STEAM教育とは、Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics等の各教科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育である。【「教育再生実行会議 提言」文部科学省より】
STEM教育との違い
STEAM教育の前身として「STEM教育(ステム教育)」があり、STEM4科目の「科学」「技術」「工学」「数学」に新たに「arts(デザインや感性、教養)」が加わって再提唱されたのが「STEAM教育」です。
「STEAM教育」がSTEM教育と違うところは、文字通り「art(s)」が含まれているように、問題を解決するために美術や音楽などの自由な枠組みで考え、科学や数学といった理数的な知識や技術を活用しながら、創造的に物事を捉えようとする教科横断的な考え方です。
STEAM教育の背景
海外でのSTEAM教育の取り組み
アメリカでは2011年に当時のオバマ大統領が「STEM教育」を国家戦略とし、「コンピュータサイエンスを理解し、実際にプログラミングを組むことが重要だ」と演説し、教育の世界基準として広がっていきました。
その後、全米工学アカデミーや美術大学など学術機関によって、より未来社会に適合した教育フレームとして「Art(s)」を加えた「STEAM教育」が提唱され、その考え方が世界に広がりを見せている段階です。とくに、ICT教育に力を入れている欧米やシンガポール、インドのような教育に関心の高い国、またAI技術やロボット工学に国家的にも力を入れている中国などで盛んになっています。
日本国内のSTEAM教育の現状
一方、日本国内で見ると、STEAM教育を実施するための学習プログラムや授業モデル、評価の手法が圧倒的に不足しており、学校現場での探求・プロジェクト型学習を行う余裕もないというのが実情です。
また、STEAM教育には、コンピュータやタブレット端末はもちろん、外部機器を不自由なく授業で使えるようにする電源キャビネットや無線LAN環境が必要ですし、STEAM教育を正しく理解し、生徒に指導することができる教員の指導力も必要になってきます。
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まだまだ、STEAM教育を実践していくのには発展途上の日本ですが、小中学校の生徒一人一台にPCタブレット端末を支給する「GIGAスクール構想」や小学校で必修化される「プログラミング教育」、産学連携の「未来の教室」実証実験といったように、政府主導でSTEAM教育の下地をつくっていくビジョンがあるなど、今後ますます普及していくことが予想されます。
GIGAスクール構想についてはこちら!
プログラミング教育についてはこちら!
STEAM教育の小学校の事例・教材
では、具体的にSTEAM教育とはどのようなものなのでしょうか。文科省では次のようにSTEAM教育について言及しています。
幅広い分野で新しい価値を提供できる人材を養成することができるよう、初等中等教育段階においては、STEAM教育を推進するため、「総合的な学習の時間」や「総合的な探究の時間」、「理数探究」等における問題発見・解決的な学習活動の充実を図る。
その際、各発達段階において、レポートや論文等の形式で課題を分析し、論理立てて主張をまとめることも有効である。そのため、国は、カリキュラム・マネジメントの視点を踏まえ、人材活用も含め産学連携や地域連携によるSTEAM教育の事例の構築や収集、モデルプランの提示や全国展開を行う。
【「教育再生実行会議 提言」文部科学省より】
STEAM教育はモノづくりや実験、体験型のものが中心となるため、上述されているように、外部ツールやサービスを提供できる民間企業や大学などの研究機関との連携が必須となります。小学校や中学校で実際に行われている事例をみていきます。
「未来の教室」実証実験
経済産業省主導のもと、「一人一人が未来をつくる当事者(チェンジ・メーカー)になること」を目標として、小学校・中学校での新しい教育を模索する取り組みです。企業や教育機関から実証実験を公募し、教育現場での体験や実験を繰り返しながら、教育改革につながる技術や方法を確立していきます。【参考:「未来の教室」ポータルサイト/経済産業省より】
2018年6月の第一次提言後、23の教育現場(教室実証校として5校が設定)で実証実験が行われました。その一年後の2019年6月に、「未来の教室」とEdtech研究会による第二次提言として、「未来の教室ビジョン」が公表され、目標のなかに「学びのSTEAM化」が掲げられています。
学びのSTEAM化
学びの自立化・個別最適化
新しい学習基盤づくり
小・中学校での具体的な事例と教材
音楽×算数×プログラミング学習
事業者 :株式会社学研プラス
サービス:Music Blocks(ミュージック・ブロックス)
小学校 :横浜市立梅林小学校,横浜市立梅林小学校
内容 :音楽と算数とプログラミングを一緒に学習できる「Music Blocks(ミュージック・ブロックス)」を使った教科横断的なプログラム学習。
【「未来の教室」ポータルサイトより】
スポーツ×プログラミング学習
事業者 :株式会社STEAM Sports Laboratory
サービス:STEAM Tag Rugbyプログラム
小学校 :静岡県袋井市 浅羽北小学校
内容 :タグラグビーを算数やプログラミングの視点から捉えて、競技力向上に向けて思考錯誤する教科横断的なプログラム学習。
【「未来の教室」ポータルサイトより】
低学年にも学びやすいプログラミング教材
事業者 :株式会社しくみデザイン
サービス:Springin’(スプリンギン)
小学校 :福岡県新宮町立立花小学校
内容 :プログラミング教材「Springin’(スプリンギン)」を用いたクリエイター体験。児童一人一人がゲームなどのデジタル作品を制作する。
【「未来の教室」ポータルサイトより】
思考センスを育成する教材
事業者 :株式会社花まるラボ
サービス:Think!Think!(シンクシンク)
小学校 :三重県教育委員会と公立小学校17校
内容 :算数の授業の一環として、空間認識や平面図形などの問題をデジタルで解く「Think!Think!(シンクシンク)」を学校PCで利用している。
【「未来の教室」ポータルサイトより】
思考を見える化するデジタル教材
事業者 :株式会社LoiLo
サービス:ロイロノート・スクール
小学校 :秦野市立上小学校
内容 :自分の考えをデジタル上のカードで可視化し、クラスで共有できる「ロイロノート・スクール」を使って、学びを共有・発表する。
【「未来の教室」ポータルサイトより】
コーディングも学べるプログラミング教材
事業者 :株式会社Progate
サービス:Progate
中学校 :全国の中学校・高等学校100校超
内容 :ブラウザ上に演習問題や指導用スライドがあり、生徒のコードの間違いを自動判定する「Progate」を導入した授業実践。
【「未来の教室」ポータルサイトより】
STEM教育研究センター
埼玉大学教育学部のプロジェクト研究として、ものづくりの活動を通した教育方法や学校や社会教育で求められるSTEM教育の研究開発を行う機関です。外部の教育研究機関や地域と連携しながら、日本型のSTEM教育について様々な取り組みを行っています。
【参考:埼玉大学 STEM教育研究センターより】
ロボットと未来研究会
ロボカップジュニア
宇宙エレベータ
ファーストレゴリーグ
ロボット教材開発
学校教育との連携プロジェクト
STEAM教育は、理数的な学習基盤をつくったうえで、新しい価値を創造・デザインする力を養っていきます。それは、日本の課題でもある文理分断を是正し、これからますます発展していく科学技術や情報社会のなかで、子どもたちが活躍していけるようにすることがねらいです。国際社会でリードしていけるような人材を輩出するためにも、これらの動きを歓迎しつつ、教育メディアとして注視していきたいと思います。