学校教育

小学校の英語教育のメリットとは?早ければ早いほど良いのか

小学校英語教育のメリット

2020年4月からの新課程では小学5・6年生で英語が教科化となり、さらには小学3・4年生で年間35時間の外国語活動が必修化されるなど、日本の英語教育の早期化・低年齢化が進んでいます。

早ければ早いほど英語の生涯学習時間は当然に増えるわけですが、小学校の早い段階から英語教育が始まることのメリットとは何なのでしょうか。新課程で始まる「英語教育改革のポイント」も押さえながら、その真相に迫っていきたいと思います。

小学校英語の教育改革のポイント

教科化で成績評価が可能に!
ライティングを小学校から!

小学校英語教育のメリット

小学校英語のメリット

英語らしく、今回は結論(本題)から述べてみたいと思います。「小学校で英語教育をすることのメリット」について、ここでは次のように言い換えていることを押さえてください。

小学校で英語教育をすること=
小学3・4年生で「外国語活動」、小学5・6年生で「英語教科化」と早期化されること

メリット=
小学生にとっての英語を学習するメリット

小学校英語の早期化メリット①「発達段階に応じたゆるやかな学習で『中一ギャップ』の解消」

新課程になると、小学3・4年生で年間35時間の外国語活動を、小学5・6年生で年間70時間の外国語科を学習することになります。なお、ここでいう外国語科とは英語科のことを指します。

現行課程 新課程
外国語活動小学5・6年生
外国語科中学1年生
外国語活動小学3・4年生
外国語科小学5・6年生

現行課程の場合、外国語活動と外国語科が小・中学校で切り離されていたこともあり、その接続がスムーズにいっていないという課題がありました。俗に言う「中一ギャップ」という問題もあります。(「中一ギャップ」については「小学校英語の課題」で後述します)

外国語活動は「音声を中心として英語に慣れ親しむ」ことを目的としているため、文字を書いたり読んだりするといったことは基本的にしません。主に、英語の歌を歌ったりゲームをしたりして「英語に触れること」を大事にしています。

それ自体は、普段英語と接触する機会の少ない児童生徒の学習導入としては適しているのですが、小学生の発達段階を考えたときには改善の余地がありました。

小学3・4年生で英語に触れる外国語活動がよい

外国語活動で行われる歌や遊びでは、表情豊かに発話することやジェスチャーを交えて表現するといったことが求められます。

少しずつ大人びてくる時分の小学生5・6年生が、学校の教室で同級生たちとする活動としては、気恥ずかしさやもどかしさがあり、外国語活動の本来の趣旨の「英語に触れる」が上手く体現できていませんでした。

その点、新課程では外国語活動は小学3・4年生に前倒しとなるため、より積極的で活発なクラス運営が可能となり、英語学習の導入としても適切化されます。

小学5・6年生は実はもっと英語を書きたいし、読みたい

また、小学5・6年生はもっと英語を文字として書きたい、読みたいという意欲があることが分かっています。

外国語科では、これまでの中学校で学習していた英語の授業がそのまま下りてくるわけではなく、「読むこと」「書くこと」についてもあくまでも「慣れ親しむ」ためですが、教科化されることでそれらの生徒の学習意欲をうまく学習につなげることが可能になります。

新学習指導要領における小学5・6年生の外国語科では、「聞くこと」「話すこと」とあわせて「読むこと」「書くこと」の4技能を扱う。ただし、「聞くこと」「話すこと」とは違って、「読むこと」「書くこと」は慣れ親しむことを目的としている。

このように、従来の「小から中への接続」が急激になっていた英語教育を、各発達段階に応じて適正化し、スモールステップでゆるやかな学習カリキュラムにすることで、小学生は無理なく英語を学ぶことができるようになります。

小学校英語の早期化メリット②「低年齢なほど英語のリスニング力が鍛えられる」

英語を聞き取るリスニング力は、年齢が低ければ低いほど身に付きやすいと言われています。最近では、幼児向けのリスニングを中心とした英語教室が増えたり、幼少期に海外の英語圏に親子留学や教育移住したりして、早くから英語の音に慣れさせる家庭が増えています。

小学3・4年生から外国語活動が始まることは、学校現場でもALT外国人講師や活動用のCDを使って、ネイティブな英語に触れる機会が増えることを意味しており、日本人が苦手とする英語を聞き取る力を高めやすくなるのです。

小学校英語の早期化メリット③「グローバルな視点で将来の可能性を広げられる」

小学校の早い段階から「英語を知っている」と子どもたち自身が自覚することは大切です。小学校では、将来の夢や目標を考える授業が多いですが、そんなときに「海外のことだから自分には関係ない」といったように、夢を抱くことすらなく将来の視野を狭めてしまうことがよくあります。

もちろん、英語を使えなくても働ける社会ではありますが、世界のプラットフォームを意のままにしているGAFAやインバウンド客の増加、在日外国人児童数の増加など、これまで以上により身近なところで「英語が使えればもっといろいろできるのに」という状況が生まれるようになります。

小学生の早いうちから英語に触れ、海外に目を向けるようにすることで世界が身近なものとなり、子どもたちの活躍の機会は一気に広がっていくのです。

ナビこ
ナビこ
たとえば、街中で外国人を見かけたとき、英語が話せないと自分には無関係なものだと割り切ってしまうけれど、英語が話せたら「なにかあったら会話して助けてあげられる」といった仲間意識みたいなものが生まれるのよね。たとえ行動に移せなくても、そうやって心のなかで世界とつながっているという感覚をもつことが大事。

 

小学校の英語教育の現状

小学校英語の現状と課題

小学校の英語教育の現状を理解するために、2020年4月から始まる新課程以前(現行課程)の日本の英語教育について整理します。
参考:「小学校英語の現状・成果・課題について」/文部科学省より

なお、ここでは2018年・2019年からすでに実施されている「移行措置期間」については触れずに、あくまでも新学習指導要領が全面実施される2020年を基本にまとめています。

移行措置とは、学習指導要領改訂の準備期間のことであり、全面実施よりも1年ないし2年期間を設けることで、学年進行での未修対応や学校現場の準備をうながし、改訂が円滑に進むようにする。
【より詳しい資料はこちら>>「移行措置関連資料」/文部科学省より

小学校英語の開始

2011年度(平成23年度)より、小学5・6年生で「外国語活動」として週1コマ実施の英語教育がスタートしました。年間の授業時数は次のとおりです。

学年 年間授業時数
(1単位45分)
小学5年生 35時間
小学6年生 35時間

外国語活動とは、必修ではあるが「教科」ではなく「領域」であり、数値による成績評価をしない活動として定められている。「英語に慣れ親しむこと」を第一の目的としており、あくまでも外国語を用いたコミュニケーションを図るための下地づくりとしての位置づけに留まる。

諸外国の英語教育の現状

中国 韓国 台湾
開始学年 小学3年生 小学3年生 小学3年生
授業時数 週4回以上 週2~3コマ 週2コマ
導入年 2001年 1997年 2001年

日本と比べて英語を話せる国民の割合が高いアジアの先進国は、いずれも小学3年生の頃から英語教育を実施しており、導入年で見ても日本が2011年なのに対して、約10年も先行している現状があります。

ナビこ
ナビこ
中国人の英語って発音もきれいですごい流暢なのよね。中国語が英語特有の巻き舌を使うってこともあるけど、それ以上に英語教育に力を入れているところが大きいみたいね。
ナビまる
ナビまる
ハリウッドでもアジアでは中国人が多く活躍しているよね。日本人の国民性も影響していると言われていて、英語を話せるようになるためには何度も英語を話してみることが大事で、失敗をおそれてちゃ改善されにくいよね。これも日本ならではの英語教育の課題の一つだろうね。

 

小学校英語の課題・問題点

小学校英語教育の問題点と課題

現行課程の小学校英語の課題を考える際に、キーワードとなってくるのがやはり「中一ギャップ」です。

中一ギャップとは、小学生が中学1年生に進学した際に、環境の変化や学習内容の変化によって学校に行くのが嫌になったり、勉強についていけなくなったりする現象のこと。

とくに英語の場合は、小学校では数値による成績評価もされず、音声を中心に楽しく学んでいたのに対し、中学校に進学した途端に文法を中心とした文字学習へとシフトしてしまうため、そのギャップに苦しむ中学生が多いといわれています。

たとえば、文末にピリオドをつけ忘れて減点されたり、4線幅からズレてアルファベットを書いて減点されたりと、点数化されることで英語学習が窮屈に感じるようになってしまうケースが実に多いのです。

ナビこ
ナビこ
小学校のときの英語は、ゲームをしたり歌を歌ったりして楽しかったのに、中学校になった途端に「勉強感」が強くなるのよ。英語好きだったあたしはどこへ… 

 

小学校英語の教育改革のポイント

小学校英語の改革ポイント

最後に、2020年から全面実施される新学習指導要領下での新しい小学校英語教育の改訂ポイントを整理して締めようと思います。

教科化によって成績評価が可能になる

小学校で英語が教科化するということは、つまりは英語の教科書ができ、英語のテストができ、英語の教材ができることを意味しています。

これまでは、小学校では外国語活動として英語に触れることが一番の目的となっており、具体的な数字でいうところの評価の観点がありませんでした。

今後は「話すこと」「聞くこと」を中心に、学校教育のなかでも子どもたちの「英語能力を見える化」することとなり、英語学習・英語指導の発展が期待できます。

また、様々なテストや教科書ができることにより、市販の対策教材や学習塾などの英語教育総体が盛り上がり、教育の質が格段に向上していくことになるでしょう。新しく形成される英語教育市場にも期待が持てます。

英語のライティングにも慣れるようになる

前述しているとおり、英語のライティング力である「書くこと」は、小学校ではあくまでも「慣れ親しむ」程度のものが求められています。つまりは、文法や構文を理解することが重要なのではなく、コミュニケーションの手段として自然なかたちで英語を文字で表現する力を付けさせようとするものです。

従来の英語教育では、10年近く学習しても英語で会話することはおろか、英文として言語化することもままなりませんでしたが、今回の小学校英語教科化によって、これまでとはちがったアプローチによるライティング指導が実現するに違いありません。

今後はICT教育も発展し、直接会わずとも容易に海外の人々とコミュニケーションをとることが可能になってきますし、むしろこれからのグローバルな時代では、非対面でのコミュニケーションスキルが必須ともなってくるので、小学校の早いうちからライティングに慣れ親しむことはとても重要だといえます。

 

ということで、小学校英語教育が早期化することのメリットについてまとめました。実際に4月から学校の授業が始まり、さまざまな授業実践が繰り返されるなかで、日本の英語教育の質が向上し、国際社会で活躍していける人材が輩出されるようになる未来に期待し、本稿を終えたいと思います。

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