学校教育

9月新学期案のメリット・デメリットと海外の現状―アメリカ帰国子女が考える秋入学の良さ

9月新学期案のデメリット

―全国17の知事が国に「9月新学期案(9月入学制)」を提案する。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、都道府県や自治体によって差はあるものの、全国の小中高、特別支援の学校は5月いっぱいまで臨時休校を決定しています。GW明けには全国に出されている緊急事態宣言は解除される予定ですが、東京都や北海道でも感染拡大の第2波が確認されているように、緊急事態宣言が継続する可能性は高まっています。

そんななかで、4月28日各地方の行政トップである知事たちが「9月から学校を新学期としてスタートさせること」を国に要請し、それを受けて文科省内ではシミュレーションを重ねていると検討状況を明らかにしました。果たして「9月新学期案」はどれほどのメリット・デメリットがあり、それによる各方面への影響はどのようなものが考えられるのでしょうか。

そこで今回は、「9月新学期案」について、欧米やアジア各国で実際に導入している国々を調べ、それによるメリット・デメリット、また日本が9月入学制に変えることの就職や社会全体への影響をまとめました。

ナビまる
ナビまる
小学校を9月入学制のアメリカで過ごした帰国子女にもそのメリットを聞いてみたよ。日本との違いにびっくり!

 

世界各国の新学期(9月入学制)

海外の新学期

実は、海外の国々の多くが9~10月から新学期をスタートさせる秋入学を取り入れています。4月入学を行っているのは先進国では日本くらいで、きわめて特殊なのです。

日本が4月入学の理由

日本が4月入学にしている背景には、年度の区切りがあります。ご存知のように、日本では1月から一年が始まる一方で、4月から翌年3月までを「年度」として別に区切っています。これは、戦前に日本政府が予算編成を決める会計年度を4月スタートにしたことが原因で、会計年度に紐づくかたちで自治体、学校、企業などが足並みを揃えたかたちです。

当時は日本は世界屈指の農業大国であり、稲作が経済、そして生活の中心でした。稲作農家がお米を売って現金化していくのは11月を過ぎたあたりからで、やがてそのお米やお金が市場に回りだすのは年末を過ぎます。天候にも左右されやすい稲作の結果を受けてからでないと年度予算が決められないこともあり、4月から新年度・新学期とする世界的に見て珍しい年度体制が形成されたのです。

海外の新学期スタート時期

欧米やアジアの国々の新学期スタート時期は次のようになっています。

1~3月 ブラジル、韓国、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド
4~6月 タイ、フィリピン、パナマ
9月 アメリカ、ドイツ、中国、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、カナダ、ロシア、ベルギー、スイス、モンゴル、トルコ

PISA調査でも毎回上位に入ってくるノルウェーやフィンランドのような北欧諸国も、新学期は例年8月末頃から開始になります。その後、1学期は12月で修了し、2学期が1月~6月までで、7月以降は夏休みになる2学期制になっています。

ナビこ
ナビこ
年をはさんで前後半に分かれるのは区切りがわかりやすくていいね。
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9月新学期のメリット

9月新学期案のメリット

では、海外で主流となっている9月入学のメリットとは何でしょうか。ここでは、実際にアメリカで幼少期を過ごした帰国子女にアドバイスをもらいながら、そのメリットをまとめています。

9月入学のメリット①「夏休みが長いうえに宿題がない」

まず、9月入学の場合はセメスター制(2学期制)を取り入れることが基本です。アメリカの場合は、1学期が9月~翌2月、2学期が3~6月で一年間となっています。

つまり、2学期が6月末頃に終了し、そこから新学期の9月まで約2か月半の長期夏休みが開始されるのです。しかも、夏休み開始と同時にその学年が修了となり、次は進級・進学となるため、基本的に宿題がありません

ナビこ
ナビこ
夏休みが日本の倍以上長くて、さらに宿題もないなんて天国すぎない?!
帰国子女
帰国子女
日本とアメリカのギャップで大きかったのは夏休みですね。アメリカでは長ければ3か月近く夏休みがあるので、その分家族との時間を大切にしたり、いろんなところに出かけたりしてゆったりしていましたね。日本は夏休み=宿題・勉強の面が強くて、むしろ塾に通っている子どもたちは普段より忙しくしていて衝撃でした。

9月入学のメリット②「課外活動や職業体験に積極的になる」

夏休みが長いこともあり、アメリカでは民間が運営しているサマーキャンプや職業体験プログラムなどが盛んです。水泳やテニスといったスポーツ系もあれば、ピアノやプログラミングといったものもあり、日本でいう習い事のようなものがサマーキャンプです。

下記は実際のアメリカのサマーキャンプの様子です。

サマーキャンプといってもずっと泊まり込みではなく、小学校低学年は毎日施設まで子どもを送迎し、日帰りで体験するといったことが基本です。送り迎えは地域でまとめてバスが通っていたり、近隣の同級生や祖父母とも協力したりするため、親の負担もそれほど多くはありません。

実はアメリカは法律が厳しく、子どもを一人で家で留守番させてはいけなかったり、12歳以下の子どもだけでは外出してはいけなかったりします(州によっても異なります)。

そのため、長期休みをずっと親が子どもの面倒を見ることは難しく、普段の学校とは異なる民間企業や団体が開催している課外活動や職業体験などのプログラムに子どもを参加させるご家庭が一般的なのです。

普段の学校では一律教育が基本となりますが、夏休みには子どもそれぞれの興味関心に合ったものや伸ばしたい力に合わせた学習活動が可能となりますし、体験期間も長いため、さまざまな取り組みを行うことが可能になります。

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9月入学のメリット③「受験シーズンが病気流行の少ない時期」

日本で考えた場合、毎年受験シーズンの1~2月はインフルエンザのピーク期にあたります。気温が下がり、空気が乾燥しやすくなる気候のため、冬に入ると風邪で体調を崩す子どもも多いです。

中学受験が盛んな首都圏の受験時期ともなると、街中や電車の中で見かける小学生はマスク着用を徹底しており、受験生を子に持つ父親もマスクを着用して風邪やウイルスを家に持ち込まないように徹底しています。もはや風邪やインフルエンザが冬の代名詞となっているといっても過言ではありません。

ですが、9月入学に変えた場合はどうなるでしょうか。当然、受験時期がずれることとなり、学期修了の約2か月前である7月頃が受験シーズンとなります。

7月末頃だと梅雨も明け、気温も25~30℃くらいと過ごしやすく、面倒な花粉症もなければインフルエンザといった風邪の流行もありません。受験生は体調管理のリスクが減り、万全の状態で人生をかけた受験に臨むことが可能となります。

ナビまる
ナビまる
受験は勉強だけでなく、体調管理も徹底しないと満足のいく結果が出にくいからね。そういった意味でも秋入学になることのメリットは大きいね。

9月入学のメリット④「海外への留学、海外からの留学が盛んに」

学校の年間スケジュールが世界基準となることで、海外へ留学することや海外からの留学生を受け入れることがこれまでに比べて容易になります。

夏休みの期間も重なるので、課外活動の一種として海外ボランティアや海外インターンに挑戦したり、さまざまな国の学生が日本を留学先候補として検討しやすくなったりするでしょう。

帰国子女
帰国子女
最近は子どもの頃から英語を学ぶために海外へ教育移住したり、私みたいな帰国子女の子どもも増えたりしているので、そんな子どもたちが海外から日本で暮らし始めるときにギャップが少なくて済むのは大きいですね。
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日本が9月新学期案を導入するデメリット

9月新学期のデメリット

それでは、現状4月新学期の日本が、今年から9月新学期案を導入した場合の各所への影響やデメリットとはなんでしょうか。次のようなことが考えられます。

9月新学期案のデメリット①「カリキュラムの作り直し」

まず、学校目線で考えたときのデメリットとしては、完全にゼロから年間のカリキュラムを作成しなければならないことです。

今回の新型コロナウイルスによる臨時休校措置によって、学校の先生は一年間のカリキュラムを大急ぎで組み直しています。文科省からの指示を受けて、約1か月半の遅れを取り戻すために、学校が再開された場合の学習計画を編成し直しているのです。

9月新学期案が出る前には、自治体によっては夏休みを短縮することを発表したところもありました。また、家庭学習での成果を成績評価に組み入れる方法なども検討が重ねられているなど、毎日刻刻と変わる状況に学校現場はひとつずつ対応していかなければならないのです。

ナビまる
ナビまる
今は先生もほんとに大変なんだよ。カリキュラム編成、慣れないオンライン授業、子どもや保護者対応…

9月新学期案のデメリット②「就職のタイミングが合わない」

社会全体で考えたときには、9月新学期案の場合は学校卒業と就職のタイミングがずれることになります。会計年度が4月スタートの日本では、3月末が決算月、4月から新年度となる企業が多いです。

企業は一年間の予算計画をしたうえで企業活動をしますが、新卒採用ももちろん企業活動の一つであり、予算に与える影響も大きいです。仮に、8月卒業となった場合には、会社の新年度と合わず、予算編成のタイミングもずらす必要が出てきます。

学校が変われば企業も変わり、それに合わせて会計年度も変わって日本経済自体も変わっていく、なんてことも十分に想定できます。

9月新学期案のデメリット③「学費の補償や経済への影響」

全国一斉休校により学校は新学期は始まっていませんが、すでに入学式や始業式は終えている状況です。つまり、授業料や入学金はすでに払い込みを終えており、仮に9月入学となった場合にそれらの学費がスムーズに移行されるのかが不透明です。

義務教育はまだしも、私学や学習塾などはその経営母体にもよって対応が異なり、申請方法なども多種多様となることから、正しく費用が補償されるのかも気になります。

学習塾はすでに首都圏の多くの大手塾がオンライン授業に切り替えています。今年度から9月新学期となった場合には、受験も後ろにずれ込むことから授業料はさらに9月からの1年間、つまり通常よりも約半年分費用がかかることから家計への負担も大きくなります。

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以上のように、新学期を9月に変更することは、さまざまな社会変化を生み出します。そして、これまでとは異なるスケジュールで学校で学ばなければならない子どもたちへの影響は計り知れません。

なかなか思うように先が見えない状況ですが、なるべく子どもたち、そして家庭への負担が少ないような仕組みづくりが求められてくるでしょう。

オンライン授業やオンライン教材が増えていますが、算数や英語はオンラインでも対応しやすい教科ですが、国語は録画によるオンライン講座では成果を出しづらく、多くの保護者の方が子どもの「国語力低下」を心配しています。かといって自宅学習で親が子どもに教える分にも無理があるから「国語は後回し」にしてしまうと確実に国語力は低下してしまうでしょう。

そんなときは視点を変えて、自宅学習でも子どもの「考える力」「ひらめく力」「伝える力」といった思考力全般を高めることができる小学館の「まなびwith」が効果的です。集中力が続きづらい国語の学習も、コナン君の謎解き学習と連携させることで学習意欲が高まり、国語が好きになるチャンスです。まずは無料教材で子どもに合うか試してみてください。
まなびwith_ナゾトキLP