早ければ2020年3月から、日本国内でサービスが開始する次世代ネットワーク「5G」。5Gの登場により、教育現場ではどのような変化が起きるのでしょうか。
小学校での英語教科化やプログラミング教育の必修化は、実はどれもが5Gサービスと深い関係があります。学校の授業レベルで起こる変化について、現在の学校の状況やすでに進められているICTを活用した授業実践例などをもとに、5Gがもたらす教育変革についてまとめました。
5G×教育のキーワード
・ICTを活用した授業
・英語4技能評価
・CBTとIoT
・インタラクティブ教育
5Gとはなにか
「5G」とは、第5世代移動通信システムの略称であり、現在普及している4G(第4世代)と比べて様々な点で優れた次世代ネットワークサービスのことです。
・超高速&大容量
・低遅延
・多数同時接続
現在主流となっているWi-Fiの通信速度がよくて約100Mbps程度なのに対し、5Gの通信速度は約20Gbpsといわれ、ケタ違いの超高速通信を実現します。
また、速度が速くなるだけでなく、同時にたくさんの人がインターネットに接続しても遅延することなく使えるようになることから、学校の授業でも様々なICT教育が実現します。
現在の教育現場のICT化状況
現在の学校現場のICT化状況について、①PC設置状況、②インターネット接続率、③教員のICT指導力、でみていきます。なお、こちらの情報は「学校における教育の情報化の実態等に関する調査/統計で見る日本」を基としています。
①学校の「PC設置状況」
教育用PC1台あたりの児童生徒数 | |
小学校 | 6.1人/台 |
中学校 | 5.2人/台 |
高等学校 | 4.4人/台 |
小学校は1台のパソコンを約6人の生徒で共有して使う必要があり、中学校、高等学校に比べてまだまだ整備が追い付いていない状況です。
2019年12月には政府が「全国の小中学校に一人一台のPCを無償配布する」という補正予算を閣議決定したこともあり、これから少しずつPCが設置されていく予定ではあります。
②学校の「インターネット接続率」
普通教室における無線LAN接続率 | |
小学校 | 43.4% |
中学校 | 42.2% |
高等学校 | 29.2% |
通常の教室での無線LAN接続率は全国の学校の半数以下と低くなっており、とくに高等学校は約3割を下回る低い水準です。
5Gの普及いぜんに、Wi-Fiすら満足に設置できていない状況が続いています。
③教員の「授業でICTを活用して指導する能力」
ICTを活用した指導が「できる」の回答率 | |
小学校 | 70.8% |
中学校 | 66.1% |
高等学校 | 72.7% |
ICTを授業のなかで活用して、子どもたちに指導が「できる」と答えた教員の割合は約7割となっており、教師の間でもICT教育に対して得意不得意で差が出ている状況です。
5Gで教育現場に起こる変化とは
5Gが日本国内で普及することにより、学校教育の現場はどのように変わっていくのかをみていきます。
5G×英語教育で起こる変化
5Gが教育にもたらす変化として、まず注目すべきは小中高での英語教育の質的向上です。
2020年大学入試での民間試験導入による英語の4技能評価(聞く・話す・読む・書く)は見送られましたが、現在の英語教育の流れはやはり4技能評価です。
2020年大学入試からTOEICなどの民間試験を導入して、英語4技能(とくにスピーキングやリスニング)を評価し、「読むこと」中心の学校教育を改革していくねらいがありましたが、試験の公平性などを理由に導入先送りとなりました。
この「話す・聞く」中心の英語授業で大きな力を発揮するのが「5G」とICT教育なのです。
海外講師とのインタラクティブな英会話授業が可能に
5G普及と教育のICT化によって、生徒は教室にいながら「同時多数」にネイティブ講師と「リアルタイム」で英会話をすることができるようになります。
スピーキング能力を高めるためには、生徒自らが興味関心をもってインタラクティブ(双方向)に授業に臨む必要があります。
一方的に授業を聞いているだけではなく、海外のネイティブ講師と英会話を楽しめるような授業ができれば、生徒のスピーキング力やリスニング力は自然とついてきますし、外国人と話すことに慣れていない児童生徒にとっても実践的な経験となります。
録画&録音、共有で生徒のパフォーマンス評価が可能に
英単語や英文を正しく発音できているかを、生徒それぞれがタブレットで録音または録画し、それをサーバーにアップすることで、教師は生徒全員のパフォーマンスを適切に評価することができます。
教師は生徒のデータを瞬時に見れるだけでなく、うまく発音できている生徒のデータを全員に共有できたり、さまざまな授業や指導に役立てることができます。
教師の英語指導力も向上する
上記のように、ネイティブな英語に触れる機会をICTによって実現できることで、従来のALTに任せっきりになりがちな英会話授業がなくなり、教師が正しく生徒の能力を評価、指導していくことができるようになります。
中学校の英語授業では、教師が英語のみを使って指導しなければなりませんが、ネイティブでない英語で授業を無理に聞くことは生徒にとってデメリットもあります。
そのような根本的な課題を、5GをもととしたICT教育によって解決することができるのです。
5G×入試問題(CBT)
5Gの普及により、学校の入試問題にも変化がやってきます。その一つが「CBT」です。
CBTとは、「Computer Based Testing」の略称であり、紙の用紙を使わずにパソコンやタブレットといったコンピュータのみでする試験のことです。
CBTといっても、現在ではオフラインで回答する入試形式ばかりですが、5Gの「低遅延」「多数同時接続」の特徴により、オンラインでのスピーキング能力測定や動画視聴をもととした問題なども実施することが可能になります。
試験を受ける側もする側も「通信環境による失敗が起こらない」という信頼性はとても重要なのです。
5G×校内オンライン(IoT)
5Gによって学校内の通信環境が整備されると、あらゆる物がインターネットにオンラインでつながっている状態(IoT)になります。
IoTとは、「Internet of Things」の略称であり、暮らしのありとあらゆるモノがインターネットに接続されている状態のことです。
たとえば、教室の前にある黒板は電子黒板となり、朝行くとその日の時間割や日直が映し出されていたり、
校内放送のスピーカーもスマートスピーカーとなり、調べものがあるときに声一つでインターネット検索をしたり、読書に集中できる音楽をかけたりすることも可能になります。
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