コロナ禍によって学校という学び舎のもとでの学習だけでなく、オンライン教育やICT教育をベースとした新しい学習の在り方が日に日に存在感を増していっています。
最近では芸能人の卒業生も多いN高等学校(通称「N高」)がテレビ番組で特集されるなど、「通信制高校でしか学べないことがたくさんある」として、全日制に通わずにあえて通信制高校を選択する学生も増えていっています。
そんななか、創立130年という長い歴史をもつ郁文館夢学園が2020年4月に新たなタイプの通信制高校を開校しました。その名も「ID学園高等学校」という、いかにも通信制高校をイメージさせるキャッチーなネーミングの学校開校に、多くの人が関心を寄せています。
そこで今回は、開校して間もないID学園高等学校について、これからの進路候補の一つとして考えている中学生や保護者の方々が検討しやすくなるように、その魅力やメリット・デメリットについてまとめてみました。
ID学園の学費・場所
ID学園の評判・口コミ
N高、ルネ高とID学園の比較
郁文館夢学園の偏差値・進学
目次
ID学園高等学校とは?場所・所在地は?
ID学園高等学校(アイディーがくえん)が目指しているのは、全日制でも定時制でも通信制でもない、「全日制×通信制」という「第4の学校」という新たな教育スタンダードです。具体的に整理すると次のようなイメージです。
第1(全日制) | 第2(定時制) | 第3(通信制) | 第4(ID学園) | |
時間 | 毎日平日の昼 | 夜間 | 自由に選択 | 自由に選択 |
場所 | 学校 | 学校 | 自宅 | さまざま |
授業 | 対面 一対多数 |
対面 一対多数 |
通信 一対多数or少数 |
通信・対面 一対少数 |
学費 | さまざま | さまざま | 安い | 比較的安い |
時間や場所に捉われず、学業以外の自分のしたいことにもチャレンジできるのが「通信制高校」の強みですが、一方で対面で行われる全日制や定時制と比べると学習の質や量で劣る部分は実際にあります。
そのデメリットの部分をカバーするために、ID学園高等学校では「担任制」を採用し、LINEに似た連絡アプリSlack(スラック)を使用して、生徒一人一人に密なコミュニケーションを図ります。
また、ID学園高等学校の最大の強みともいえるのが、全日制の郁文館高等学校(いくぶんかん)に転入できるということです。これはほかの通信制高校と大きく違い、生徒の選択肢が格段に広いことを意味しています。
たとえば、通信制高校に入学したものの、途中で環境や心情が変化して全日制に通いたいと思った場合、通信制高校からの転学、編入はきわめて難しく、さまざまな障壁が存在します。
ですが、ID学園高等学校では同じ学校法人による全日制の郁文館高等学校があるため、卒業に必要な単位取得やカリキュラム移行などで悩む必要もなく、しっかりと学んだことを生かしながら次のステップに進むことが可能となります。
ただし、ID学園高等学校の通信制(フレックススタイル)から直接全日制の郁文館高等学校に転入できるわけではありません。次のようなステップが必要です。
例:ID学園高等学校 通信制(フレックススタイル)の生徒が転入したい場合
→ID学園高等学校 通学制(全日スタイル)に転籍
→郁文館高等学校(全日制)に転籍
ID学園高等学校の場所・所在地
ID学園高等学校では、長野県にある本校と東京にある東京本部校の二つの校舎があります。
全日制のグローバルコースやソーシャルコースに入学希望の生徒は東京本部校に通えることが前提となります。そのため、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・群馬県・栃木県・山梨県の関東圏に在住の中学生、もしくは入学後に移住することを条件とできる中学生のみが出願することができます。
なお、長野県在住の方は長野本校に通学します。また、東京本部校に通っている生徒はスクーリング授業を受けるために、毎年1回1週間にわたって長野本校に通うこととなります。
〒389-0501 長野県東御市新張1931
〒113-0023 東京都文京区向丘2-19-1
ID学園高等学校のコース編成・学費・授業料
通信制 (フレックススタイル) |
フレックス型コースのみ |
---|---|
通学制 (全日スタイル) |
①グローバルコース ②ソーシャルコース |
ID学園コース①「通信制 フレックス型」
ID学園高等学校の通信制は一つしかなく、それがこのフレックス型コースです。次のようなサイクルで学業に励み、最終的に卒業に必要な単位(74単位以上)を取得することによって高校卒業資格を得ることができます。
- レポートに取り組んで、定められた期間内に提出
- 科目ごとに決められた回数のスクーリング(面接指導)を受講
- 添削指導を受講し、レポートに基づいたテストに合格
通信制フレックス型コースの強み・メリットは次のとおりです。
- 少人数制の完全オンライン指導
- スラック・スタディサプリなどICT教材が充実
- 日本と海外の高校卒業資格を両方取得できる
自宅にいながら少人数によるオンライン授業を受けることができます。教師は担任制であるため、生徒一人一人の学力や学習状況も踏まえたうえでの指導を受けることができます。
また、補助教材として動画授業サービス「スタディサプリ」を全学年に導入しており、生徒は習熟度に合った学習を自由に選択でき、大学受験対策としても利用することが可能です。
そして、最大の魅力ともいえるのが日本と海外(ニュージーランド)の高校卒業資格をどちらも取得できる「ダブルディグリー制度」です。
ダブルディグリー制度とは
日本にいながら、ID学園高等学校の通信課程を履修することで、英語圏のニュージーランドと日本の高校の単位および卒業資格を両方取得することができる制度です。
ダブルディグリー制度を利用することで、日本の大学進学だけでなく海外の大学進学も可能になり、高校生たちの将来の選択肢を増やすことができると評判です。
ID学園コース②「通学制(全日) グローバルコース」
全日制のコースは二つ用意されており、そのうちの海外留学を経験して将来世界で活躍していく夢を持つ人に特化したものが「通学制グローバルコース」です。
同じ学校法人である郁文館グローバル高等学校が積み重ねてきた「自立型留学プログラム」を活用し、高校2年生のときには最大1年間の海外留学を経験することができます。
通学制グローバルコースの強み・メリットは次のとおりです。
- 2年生のときに長期海外留学できる
- 3年生のときに海外ボランティアに参加する
- 席上留学(オンラインレッスン受講)ができる
- 留学しても3年間で卒業資格を取得できる
全日制の郁文館グローバル高等学校では、毎年30名以上の海外大学進学者を輩出しており、ID学園高等学校の通学制グローバルコースでも2年生のときに同じニュージーランドへ留学することができます。
さらに、留学は基本的に海外の高校1校に対して生徒1人留学のため、完全に自立したかたちで英語、文化、海外教育に触れることができます。
SDGs(エスディジーズ)にも力を入れており、3年生ではカンボジアの貧困世帯にパンを配布するボランティア活動など、世界が抱える諸問題についてよりリアルに実体験として経験することができます。
そのほか、席上留学という学校で受講するオンラインレッスンでは、フィリピンのセブ島またはセルビアの英語ネイティブ講師とつながり、ライティングやリスニングなどの英語4技能を効率よく高めることが可能です。
ID学園コース③「通学制(全日) ソーシャルコース」
国内に存在するさまざまな社会問題、地域問題に対して、実際に企業や自治体とインターンシップというかたちで協力しながら、諸問題の解決に取り組んでいけるのが「通学制 ソーシャルコース」です。
将来的に社会で活躍していきたいという志があったり、会社を起こしてビジネスを立ち上げたいというビジョンがあったりする高校生に特化したコースです。
通信制ソーシャルコースの強み・メリットは次のとおりです。
- 起業塾で社会に人脈をつくることができる
- 大学の総合型選抜入試に合格しやすくなる
- 実際に会社を設立できる
将来起業したいという学生が在学中にさまざまにビジネス視野を広げながら、企業や自治体の人々との人脈を作っていくことができるのが大きな強みです。
さらに在学中には財務諸表や事業計画書、資金繰り計画書の作成など実務的なビジネススキルを学べ、最終的には実際に自分で企画した事業企画で会社を設立することもできます。
また、2020年度からは大学推薦入試が新しくなって総合型選抜入試が実施されることとなりましたが、入試で重視されるようになった課外活動などにおいて具体的にアピールが可能となり、有名国立大学などにも合格する確率が高くなります。
ID学園高等学校の学費
ID学園高等学校の学費は、通信制と通学制(全日)で2パターンあります。また、通学制であっても2年生のときの留学期間によってトータルの学費が変わってきます。
ID学園コース①「通信制 フレックス型」の学費
入学金 | 65,000円 (入学検定料15,000円/入学金50,000円) |
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学費(1年次) | 255,000円 |
学費(2年次) | 234,300円 |
学費(3年次) | 165,300円 |
合計 | 719,600円 |
ID学園コース②「通学制(全日) グローバルコース」の学費
入学金 | 65,000円 (入学検定料15,000円/入学金50,000円) |
---|---|
学費(1年次) | 1,171,000円 |
学費(2年次) | 234,300円 +68,000円/月 *留学期間によって異なる |
学費(3年次) | 981,300円 |
合計 | ・2,859,600円(半年間留学の場合) ・3,267,600円(一年間留学の場合) |
ID学園コース③「通学制(全日) ソーシャルコース」の学費
入学金 | 65,000円 (入学検定料15,000円/入学金50,000円) |
---|---|
学費(1年次) | 1,171,000円 |
学費(2年次) | 234,300円 +68,000円/月 *留学期間によって異なる |
学費(3年次) | 981,300円 |
合計 | ・2,859,600円(半年間留学の場合) ・3,267,600円(一年間留学の場合) |
郁文館夢学園とは?偏差値や進学実績
なお、郁文館夢学園には「郁文館中学校」「郁文館高等学校」「郁文館グローバル高等学校」の3つの学校がありますが、ここでは高校の「郁文館高等学校」と「郁文館グローバル高等学校」についてまとめています。
とくに進学を考えている中学生や保護者の方が気になる次の項目についてまとめています。
- 校風・生徒数
- 偏差値
- 進学実績
郁文館夢学園とは①「校風・生徒数」
「郁文館高等学校」は同じ学校法人が運営する「郁文館中学校」からの内部進学がある中高一貫高校です。そして「郁文館グローバル高等学校」はその姉妹校にあたり、本格的な留学制度と卒業後の海外進学に特化した国際科の学校になります。
これらの学校を総称して「郁文館夢学園」という学校ブランドがあり、特化しているコースやカリキュラムに多少の差異はあるものの、全体的な校風や学びは一貫して生徒に自立を求め、ほどよく規律のあるしっかりした学校という印象です。
1889年に創立され、卒業生は約3万人、学校全体でかぞえると生徒数は約1,500人と比較的規模の大きな学校になります。私立高校であることから教師の平均勤続年数も高く、信頼できるベテラン教師、専任教員が多いところも安心感があります。
もともと2010年までは男子校であったことから、郁文館高等学校は男子生徒が6~7割ですが、郁文館グローバル高等学校の場合は男女半々の割合となっています。
海外留学はもちろん、スタディサプリのようなICTツールをはじめ、SDGsへの取り組み、企業や自治体との連携など、学びに対して寛容で、「よいものはどんどん取り入れていく」という印象を受けます。
郁文館夢学園とは②「偏差値」
「郁文館高等学校」と「郁文館グローバル高等学校」それぞれの偏差値です。いずれも高校偏差値確認サイトをもとに、80%偏差値で示されています。
郁文館高等学校 | 55-60(進学/特進クラス) 65(東大クラス) |
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郁文館グローバル高等学校 | 52-55 |
郁文館夢学園とは③「進学実績」
2020年6月に学校HP上で公開された最新の大学合格実績(令和元年度)は次のとおりです。
「郁文館高等学校」と「郁文館グローバル高等学校」それぞれの「国公立大学」「私立大学」「医学薬学」「海外大学」3つの進学実績でまとめています。
郁文館高等学校の大学合格実績(卒業276名)
国公立大 (16名) |
筑波大、群馬、秋田、東京工業、電気通信、前橋工科、横浜市立、国立看護、防衛 など |
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私立大 (437名) |
早稲田、慶応義塾、上智、東京理科、明治、青山学院、立教、中央、法政、学習院、同志社、立命館、学習院、日本、東洋、帝京、東海 など |
医学薬学 (17名) |
筑波、大阪医科、帝京、福岡、東京薬科、日本、防衛医科 など |
海外大 (6名) |
アメリカ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、韓国 |
郁文館グローバル高等学校の大学合格実績(卒業145名)
国公立大 (3名) |
金沢、岡山、鳥取 |
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私立大 (111名) |
早稲田、慶応義塾、上智、国際基督教、明治、青山学院、立教、中央、法政、学習院、関西、関西学院、立命館、立命館アジア太平洋、学習院、武蔵野 など |
海外大 (46名) |
アメリカ、イギリス、オーストラリア、マレーシア、カナダ、ニュージーランド、韓国、スペイン、インド、台湾、リトアニア |
ID学園とN高・ルネサンス高校の比較<メリット>
N高等学校について知りたい方はコチラ!
ルネサンス高校について知りたい方はコチラ!
ID学園とN高、ルネサンス高の学費比較
ID学園高等学校、N高等学校、ルネサンス高等学校の通信コースに通った場合の1年間の学費を比較します。入学金を含めた初年度の年間費用になります。
ID学園 | N高 | ルネ高 |
320,000円 | 253,000円 | 370,000円 |
こうして比較すると、N高が最も安く、ルネ高が最も高いという結果となります。ID学園は2020年設立ということもあって、これらのいわば競合学校の中間をとった結果だといえます。
N高が安くなったのは入学金が1万円と圧倒的に低く設定されていること、逆にルネ高が高くなったのは年間の授業料が高くなっていることが影響しています。
ただし、いずれの学校も就学支援金*を年間約18万円受給できる可能性があり、それを利用すれば年間約7~14万円ほどで入学することができます。
*就学支援金は家庭の教育費負担軽減を目的として、世帯年収に応じて一単位あたりの授業料を国が負担してくれるもの。上記は世帯年収590万円未満の場合の支援金額。
ID学園vsN高vsルネ高
では、学業・コース内容などで比較した場合、それぞれの学校にはどのような特色があるのでしょうか。いくつかの項目に分けて整理していきます。
ID学園 | N高 | ルネ高 | |
学校の雰囲気 | 第4の学校と掲げているように通信制高校が持つデメリットを改善することに重きを置いており、今後新しい通信校モデルとして注目される可能性が高い。 | オンライン授業に定評があり、新しいことをどんどん取り入れ発信している。メディア露出も多く、通信制高校で最も勢いがある。生徒の人気も高い。 | メディア露出は少ないが今年からルネ中等部も開校するなど、堅実に伸びている通信高校。eスポーツにも力を入れている。 |
生徒の印象 | 郁文館夢学園で考えた場合には留学生制度を利用したい学生、海外志向の強い学生が集まりやすい。 | 最も学生の幅が広く、多様性があるのがN高の強みでもある。 | 美容関係やプロスポーツ選手志望など、将来やりたい目標がある生徒が多い。 |
学習内容 | 社会問題など幅広いテーマに関して問題意識が持てる。 | 将来の目標を見つけることができる。様々なことにチャレンジできる。 | 専門的な知識やスキルを高めることができる。 |
進学・進路 | 2020年開校のためデータなし。ただし、郁文館夢学園が持つ海外の提携校や卒業生の進路などが影響する可能性がある。 | 大学進学実績では東大など難関大学合格者も近年増えている。 将来起業したい学生にも向いており、ビジネス人材も多く輩出している。 |
芸能界やスポーツ、美容業界など幅広く、専門的な分野で活躍する生徒が多い。 |
ID学園は今年開校ということもあり、学校の印象については記載していません。今後、進学実績や生徒の学習状況などが開示されてきた段階で追記していきたいと思います。
N高はさまざまなことにチャレンジできることから、まだ将来やりたいことについて具体的なイメージを持っていない学生にはN高が適している印象です。
一方でルネ高はすでに将来やりたいことや職業が決まっている学生が、高校卒業資格取得を目指しながら、将来に役立つ専門的なスキルを在学中からも高めていけるような学校です。
ID学園はこれら2校の強みをうまく取り入れながら、郁文館夢学園が長年蓄積してきた海外留学やグローバル人材輩出のノウハウをミックスさせて、独自の通信制高校を築き上げていくと考えられます。
まだまだ情報が少ないので、ID学園について知りたい方は下記から無料の資料請求をすることをオススメします。
ID学園高等学校の評判や口コミ
この運営は、絶対に面白い。
新しく学校を作るチャンスですね。
ID学園って言うのをNews picksが協力して作っていたけど、
どんな学校ができるんだろう https://t.co/9jGHECAEA8
— SOLA (@SOLA_SORA_8) March 14, 2020
ITツールがなかなか魅力的だね。>
学校法人郁文館夢学園、新しい通信制高校 「ID学園高等学校」を2020年4月に開校 https://t.co/OoXW2HMqVs @shinbo_twより
— Taiki Arai (@bignoblemen) January 15, 2020
ということで2020年に新たに開校した通信制高校のID学園高等学校について、学費や偏差値、コース内容などの詳細、そしてN高やルネサンス高校との違いについてもまとめました。